19/62
-4
「ねぇ、侯爵様が静養に向かってもう半年以上も経ったのよね。それなのに何も良い報告がないなんて」
「それに侯爵夫人って妊娠中なんでしょう?侯爵様がいない中で出産だなんて不安なはずだわ。本当に神様って残酷ね」
ディーナのお腹が大きくなるにつれ、周囲からはディーナには同情するような声や応援するような声が掛けられることも増えていた。
ただ、それと同時に厄介なトラブルも増えていた。というのも男性貴族たちが「療養中の夫に変わって、子供たちを守る存在になりたい」と声を掛けてくることが増えたのだ。侯爵家の地位、大きく発展したワイン事業。それらは確かに魅力的なのだろう。
「万が一、出産で何かあったときに自分が力になれるはずだ」
「夫がいない中で生まれてくる子供が可哀想だ」
そんな言葉はどれもディーナの胸に鋭く刺さった。実際にジュールと離婚するならば、再婚も選択肢に入れなければならないのは…良く分かっている。
ただ…それが正しいことだと分かっているのに、簡単に決断することができない。ディーナはそうして今日もまた、都合の良い言葉を口にしてしまう。
「ごめんなさい、私はまだあの人を愛しているので」
結局はディーナはジュールを盾にするようにして断り、そうしてまた「侯爵夫妻は病に引き割かれながらも愛し合っている」と噂が広がるのだった。




