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その日、教会から帰ったディーナは、子供たちに会いに向かった。
この春から貴族の子供たちが集まる学校に通い始めたことからも、きちんと制服を身に着けて毎日真面目に勉強を続けている子供たち。いつのまにか侍女たちが手伝わなくともネクタイが自分で出来るようになっており、難しい手首のボタンも簡単に留められるようになっているようだった。
…そんな成長を自分は、いつのまにか見逃していたのだ。
「あ、母様。おはようございます。乗馬をしていたんですか?」
「お母様!今度僕も!!僕もお馬に乗せてください!!」
キラキラとした視線を向けてくる子供たちに目頭が熱くなって、ディーナは彼らを抱きしめた。もしかしたら、鼻を啜る音で子供たちはなにか異変に気付いているかもしれない。それでもディーナは出来る限り明るい声で子供たちと接することにした。
「ねぇ、今日学園から帰ってきたらいっぱい貴方たちの話を聞かせてくれない?一緒に夕食を食べて、次の休みには一緒に馬に乗りましょう?」
そうしていつの日にか、ディーナは夜に眠れなくなることはなくなった。
子供たちに本を読み聞かせたり、その日にあったことを話しながら過ごすようになり、そのまま共に寝落ちてしまう日が増えたのである。ふんわりとどこか甘い石鹸の匂いがする子供たちと共に眠ることで、いつしか悪夢も見なくなっていた。
仕事面でも今までのように詰め込んで仕事することはなくなり、側近のハワードのアドバイスもあって仕事を任せられる人材を何人か雇うこととした。今は無理せず出来る限りの仕事を進めながらも、多くの人の力を借りている。
今現在、ディーナの左手の薬指にあるのは…以前子供たちが選んでくれた指輪である。
結婚指輪はもう一度、上の子であるエルドに預けることにした。自分があの人に向き合う準備が出来た時に受け取りたいと、そう話したディーナにエルドもどこか安心したような表情で頷いてくれた。
ただ…今はまだジュールがあの屋敷でベルと共にどんな生活をしているのか、報告を聞く勇気はない。
一応、万が一のことがないためにも、あの屋敷で起きている出来事は密偵に調べさせており、側近であるハワードが報告を受けてくれている。ハワードがなにも報告してこない以上、あの屋敷で起きることをディーナはまだ知ることはないだろう。
もう少し、自分の中で気持ちの整理が出来るまで。
それまではディーナはまだ世間で噂される、侯爵様に愛された夫人としての仮面を被りながらも過ごしていく。屋敷で静養する夫のジュールを想いながらも、息子たちと共に侯爵家を支える妻。
それが今のディーナだった。




