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「夢に見てしまうんです。あの人が…私の傍にいることを。けれど…私があの人に近づこうとすると、ハッとこれは夢だと気付くんです。現実であの人が自分に微笑んでくれるはずがないって分かってるのに…」
夢の中ではいつも最後に必ず、ジュールとベルが2人で幸せそうに過ごす姿を目の当たりにすることになる。
ディーナの心を抉るようにして、いつかの記憶のようにいちゃいちゃと楽しそうに過ごす2人。苦しくて彼の名前を呼んだまま目を覚ますことも多く、夜はぐっすりと眠れない日が続いていた。
最近は夜を迎えたくなくていくつも仕事を詰め込んでいるものの、体調不良も合わさって時折、気絶したように意識を失う日もあった。周囲を心配させているのは理解できる。ただ、1人で過ごす夜が本当に恐ろしいのだ。
「…私…っ、どうしたら…」
ぽろぽろと涙が落ちていく中、隣に座っていた神父のトラヴィスがいつのまにかディーナの前に移動していた。視線を落としていたディーナと目を合わせるようにして、彼の真っ直ぐな視線がディーナを射貫く。
「あなたの後悔はきっと胸が苦しいものだと理解できます。…ですが、あなたが自分を責める度、傷つく人はいませんか?あなたを心配で見つめている人は?あなたは過去を嘆く前に、きっと見えていないことがあるはずです」
トラヴィスがそう告げて差し出してくれたハンカチを受け取りながら、ディーナは子供たちの顔を思い浮かべた。
ここ最近、仕事ばかりで一緒に時間を作れなかった息子のエルドとフィン。
そんな息子たちと楽しく話をしたのは…新しい宝石を選んでくれた子供たちと指輪を作ろうと話をしていたときかもしれない。
それなのに、今ディーナの左手に嵌められているのは捨てたはずの結婚指輪であり、上の子でもあるエルドがたまたま拾い上げていたものである。エルドに指輪を返してほしいと告げに行ったとき、彼はどんな顔をしていただろうか?
そんなことすらもう、思い出せなかった。
「…っ、ごめ、んなさい…」
全ては子供たちのためだった。あんな父親はいらないと追い出したはずなのに、結果、自分が狼狽えて、子供たちを不安にさせている今の現状に気付いて胸が痛くなる。
「誰しも同じ失敗をして…僕だって同じように身近な人を苦しめてきたのでわかります。今はまず、自分と身近な人で幸せになりましょう。そうすれば一度は貴方の元を離れた人だって、あなたが恋しくなりますよ」
そう話すトラヴィスがディーナの手に持たせてくれたのは、甘い蜂蜜のキャンディだった。




