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ルチアが見たもの、それは中庭であのデリックが幼い赤子を抱き上げている様子だった。
昔から大人びた性格で、無邪気に振舞う幼子を苦手としていた様子もあったデリック。ルチアは以前、デリックがもし結婚して子供が出来たら…なんて話をしたこともあったが、そんな光景をまさか自分が目にできるとは思わなかった。
「ルチア、どうした?」
ルチアの様子に気付いたシリルも傍にやってきて、中庭の光景を見ると「あいつこんな表情をするんだな」なんて驚いたように声を漏らす。学生時代から付き合いがあるシリルにとっても、デリックの姿は予想外だったらしい。
そんな中、ルチアはデリックの傍にいる男女に目を向ける。女性の方にどこか見覚えがあると感じて…ルチアは以前、自分が羨んだこともある侯爵夫妻だと気づいた。
「あそこにいるのは侯爵夫妻の間に生まれた双子。けど、片方はなぜかデリックに一番懐いていてな、時にはデリックがあぁして子守をしているんだよ。デリック自身は自分の姿を見られたくなさそうだったけど、面白いから君たちにも見せてあげようと思って」
そう話すミリウスはくすくすと笑いながらスケッチブックを手にし、気ままに目の前の風景をスケッチしだす。彼の絵の中のデリックは見たこともないほどに穏やかな顔をしていた。
「最近、あの子にあまり連絡が付かなかったのは、こんな理由だったのね」
ルチアはそうしてデリックの姿をじっと見る。きっと、このまま彼の前に姿を現してしまえば、彼は拗ねてしまうだろう。昔から自分が予想していた以上のことを嫌う性格であり、デリックはなにより自分の情けない姿を見られるのを嫌がっていたからだ。
(あの子のことはいつかデリックが紹介してくれることがあるかもしれないし、それまでは知らないふりをしましょう)
そんなことを考えて、何も見なかったように窓を閉めようと考えたルチア。
しかし、そんな中で不意におかしなことが起きる。
というのも、デリックに抱いていた赤子とルチアは目が合った気がしたのだ。




