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その日、ルチアは久々に懐かしい人物とお茶の席に着いた。
久々に顔を合わせた元婚約者のミリウスが面白いものが見れると教えてくれ、ルチアはシリルと共に生家のある隣国を目指した。最後に訪れたときはナイフを振り回して騒ぎを起こしたあの家。
当時のことはシリルに知らせていないことからも、ルチアは今日、結婚してから初めてこの家を訪れたように振舞うことにした。
あの魔女の残したしこりはまだあるものの…それでもようやく、穏やかに過ごせるような日々が戻ってきたのである。
「いい絵だろ?」
そんな中、シリルの視線に気付いたミリウスがそう声を掛ける。
シリルの視線の先にあるもの…それはミリウスが描いたルチアの肖像画だった。
最近では屋敷1つを買えてしまうほどの値段でやりとりされているという、話題の画家のミリウスの絵。今はパトロンに管理されており、以前よりも絵を手に入れることは難しくなったそうだが…この部屋に掛けられているルチアの肖像画には右下に”ミリウスからデリックへ”とサインが描かれていた。
ルチアにとっては苦い記憶。この家でナイフ騒ぎを起こした際、ミリウスがわざわざ届けに来たのがこの絵だったはずだ。
「このドレス…見覚えがある」
「ん、そうか?デリックに絵の依頼を受けた当時はルチアは色々忙しそうにしていたからな。モデルがいない中でこの絵を描いたんだよ。ドレスに関してはデリックにお願いして、この屋敷に置いてあったものを適当に選んで描いたはずだ」
ルチアはそんな2人の会話を聞く中で、「初めて会った時のドレスだ」とシリルが口にした台詞に一気に顔が赤くなるのを感じる。
「いや、確かにそうだよ。俺がルチアに一目ぼれしたときに、このドレスを…」
シリルが口にする言葉に恥ずかしさを覚えて、これ以上なにも言わないようにとシリルの口を押さえるルチア。驚いたようなシリルだったが、ルチアの恥ずかしそうな顔を見ると柔らかく目を細める。
「分かったよ、もう何も言わないから」
そんなシリルからの言葉を聞き、真っ赤になった顔を冷やそうとルチアは窓際へと向かう。窓を開ければ外の綺麗な空気が中に流れ込んできた。
…しかし、そこから見えた中庭の光景にはっとする。
「これはどういうことなの」
それは、ルチアの口から自然と漏れた台詞だった。




