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地下牢に続く扉の前にやってきて、ルチアは警護をする女騎士たちに話しかけた。彼女たちにはこれから暫くの間、中での会話が聞こえない場所で待機していてもらうつもりだ。
ただし、万が一、中からベルが逃げ出したらその場で殺して構わないと命令する。
「あなたたちが殺すのはベルだけよ。もし、様子がおかしくなったシリルが出て行っても、傷をつけないであげてね。あの人がおかしくなったら対処するのは私だから」
そうして、女騎士たちに告げた後、ルチアはシリルに向き直った。彼はベルの魅了が効かない魔道具を付けているものの、不安そうな表情だった。
「あなたはここにいて。中に入るのは私だけでいいわ」
「いいや、これは俺がすべきことだと思う。それに、もしルチアが傷つけられたら」
「あの女はこの場所で鎖に繋がれているのよ?もし危険が迫るとしたら、あなたがベルの鎖を外した場合でしょうね」
ルチアは自分が嫌味な台詞を口にしていると理解していた。しかし、ベルの魅了の力が未知数な以上、魔道具があってもシリルが操られてしまう可能性だってあるのだ。
それにもう一度、彼がベルに惹かれた姿を見て自分が冷静でいられる自信はない。
かつて、魔女に振り回されたというこの地の領主が、妻によって魔女と共に心中したあの事件を繰り返すことになるだろう。
「…いや、君に殺しはさせたくない。俺がちゃんとけじめをつける」
シリルは強く唇をかんだ後、そう口にしてルチアへ向き直った。瞳はまだ不安に揺れている様子だったが、彼なりに決意したのだろう。ルチアはそんなシリルと真っ直ぐに向き合うことにする。




