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少しずつ朝日が昇り始めるようなそんな時間に、ディーナは愛馬と共に思いっきり掛けていく。息子たちが生まれる前は良くこうして走り回っていたこともあったものの、出産してからはなかなか愛馬と共に走る機会も減っていた。
それでもあちこちでトラブルを起こしていたジュールがいなくなって、ディーナとしては今までよりもずっと順調に仕事を進めることが出来ていた。
今はもう女であるディーナが領地経営で先頭に立ったとしても、ワイン事業を積極的に進めたとしても、誰も文句を言うことはない。世間で流れている噂も味方して、病気療養中であるジュールに変わって侯爵家を支えるためにディーナが奮闘していると、むしろ温かく見守ってくれる人々が増えたからである。
ただ、そんなディーナにとって予想外だったのは、ジュールが出て行って暫く悪夢を見たり、体調不良が続いたことである。
この機会に一気に事業の規模を大きくしたりと、忙しく過ごしていたのは事実である。しかし、そんな日々の中で眩暈が増えたり、食事が喉を通らなくなることが増えて…思い当たったのは夫を不幸にしたことで神が怒っているのではないか?という不安だった。
いくら他の女に目を眩んだ夫がいたとしても、家具も使用人もいない森の奥の別荘に夫とその愛人を追いやったのはやりすぎだったかもしれない。
一応、2人が餓死して亡くなると夢見が悪くなることから、ある程度の日が持つ食材や綺麗な水が出る井戸の用意はしておいた。わざわざ農作物や果実のなる木などを屋敷の側に植えた手間などもあって、お腹が空いても森の中を散策すればある程度の食べ物は手に入る手配をしている。
それでも神を怒りを買ってしまったのならばと、ディーナはそれ以来、仕事の空き時間を見つけると教会に通って祈りを捧げていた。
噂で流れていたディーナの教会通いの噂の真実は、病気の夫の無事を祈る姿ではなく、夫を不幸にしたことで体調不良が続くことからも、神からの怒りを鎮めようと祈りを捧げるディーナの姿だった。
「ちょっと待っててね」
朝日が昇り始めた頃、ディーナは教会の傍にある馬の管理場所に寄って、もう少し走りたそうにする愛馬を宥めながら預けることにする。そうして、ここ最近はもうずっと通い詰めている教会へと足を踏み入れた。
まだ朝日が昇り始めたばかりということもあり、教会の中で見かけるのは掃除のために動き回っている数人の教会関係者だけだった。しかし、誰もがディーナには小さく会釈するだけで声は掛けて来ない。
(きっと今日も、夫のために祈りを捧げに来たのだと思われているのでしょうね…)
ディーナはそんなことを考えながらも慣れた様子で足を進めると、まだ冷たい教会の床に膝をついて祈りを捧げるのだった。




