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「…うぅ」
噂の侯爵家ではディーナが悪夢によって魘されていた。
夢の中で見たくもない夫のジュールとベルの幸せそうな生活を目の当たりにすることになり、彼らがこちらをあざ笑うようにしている姿に酷く胸が痛む思いをしたディーナ。そんな状況にハッと目を覚ましたディーナは、べったりと寝汗をかいていることに気付く。
喉はからからに乾いており…もしかしたら、眠りながらうわごとのように何かを繰り返していたのかもしれない。
ふと、ディーナが視線を時計に移すと、ベッドに横になってからはまだ数時間ほどしか経っていなかった。それでもこのままもう一度眠りに付くことは出来なさそうであり、深くため息を吐く。
「教会に…行こうかしら」
このままベッドにいても良くないことばかり考えてしまいそうなディーナは、そうして身支度を始めることにした。深夜を少し過ぎたこの時間に使用人たちを呼ぶのも申し訳なく思えて、自分で簡単に身支度をするディーナ。
しかし、着替えたのはいつものようなドレスではなく乗馬服で、久しぶりに愛馬と共に走ることにしたのだった。
まだ風が冷たい夜明け前の時間、馬小屋に入ってきたディーナに御者の男は驚いたようだったが、ディーナが馬を走らせたいというとすぐに手配をしてくれた。結婚前から共に過ごしてきた愛馬はディーナを見ると、最近構っていなかったこともあり拗ねたような反応をする。
それでもディーナがごめんなさいと頭を下げると、愛馬は困ったようにしながらも顔を擦りつけて甘えてくるのだった。




