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先に北部に向かったシリルを追いかけるようにして、ルチアはその日、王宮を出る準備をしていた。
「今日で最後なんですね」
そんな中、ルチアに声をかけてきたのは、寂しそうな表情をするロニーだった。その後ろにウォルターが控えており、2人ともわざわざ見送りに来てくれたようだった。
「会えなくなるなんて寂しいです」
「私もよ。…いっぱいお手紙を書くわね」
ルチアはロニーに視線を合わせると、そのまま彼の体を抱きしめる。すると、ロニーはウォルターには聞こえないように耳元で「ルチア様は僕にとって母の様な存在でした」と囁いた。
自分が生まれるのと同時に母親を亡くしたロニー。その後は先王妃にずっと厳しい躾を受けてきて、彼も1人で苦しんできたはずなのだ。
「ロニー…」
「僕、もっともっと成長します。そうして、ルチア様にカッコいいところを見せたいんです」
ルチアは以前よりもずっと大人びたロニーの姿を見て、嬉しくなると思うのと同時に罪悪感を感じる。
そうでなくとも、ロニーは既にルチアが今までしてきた仕事を引き継ぐようにして、国政に関わっているのである。ルチアが無理を行ってシリルの元へと行くことができたのも、誰よりもロニーが背中を押してくれたからだった。
(でも、私が本当にロニーの母親だったら、きっとロニーのことを優先していたわ。シリルを捨てて、ロニーがもっと子供らしく生きられる環境を作ってあげたいと思うもの)
だからきっと…シリルを捨てることが出来ずにいる自分は、ロニーの母親としては相応しくない。
ルチアはそんな言葉を今は胸の中に隠すことにするのだった。




