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「ねぇシリル。あなたは1人で北部に行くつもりかもしれないけれど、私はここでの仕事を終わらせたらすぐに追いかけるわ」
そう話す彼女は、シリルの体に抱きつくようにして膝に座った。
「…いや、君には王都でまだ」
「そんなのどうだっていいの。だって私、嫉妬深くて性格の悪い女なのよ?離れている間に、またベルのような変な女があなたに近づいたらって思ったら、どうせ何の仕事にも手が付かなくなるもの」
そうして、ルチアはシリルの首に腕を回すとそのままシリルの肩口に顔を埋める。その際、シリルは肩口が何かで濡れていく感覚で、彼女もまた隠れるようにして泣いていることが分かった。
「…こんな女、選んで間違いだって思った?」
ルチアが口にした言葉を聞き、シリルは応えるようにして彼女の体を強く抱きしめる。
「そんなはずない」
「でも、私あなたが離婚の話を進めていることも知っているのよ」
そう告げるルチアの言葉に慌てるようにして体を離すシリル。こちらを濡れた瞳で見つめるルチアと目が合い、シリルの胸の中は気まずさでいっぱいだった。
「子供が出来ないこんな女なんていらないんでしょう?」
(あぁ、どうして、彼女をこんなにも追い詰めてしまったのだろう)
本当に、自分はどれほどに馬鹿で愚かな存在なのだろうか。ルチアに安心させる言葉をこの場で告げてあげることができない自分が、本当にもどかしくも思える。
「…ルチア…俺には君だけ…」
シリルはルチアに自分の気持ちを伝える手段がなくて、結局そのまま強く彼女を抱きしめることしかできなかった。




