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突如として若い騎士と共に消えたベルの行方は誰も知らなかった。話を聞く限りはルチアが隣国で色々と力を持つ弟に協力を仰いでいるらしいが、詳しい情報がシリルへと回ってくることはなかった。
シリルは現在、静養中だとして殆ど外に顔を出していない。ベルに夢中になって国政を投げ出していた事実がある以上仕方のないことだが、シリルの評判は散々だった。それこそ、国民の前に姿を現せば様々なものを投げつけられることになるだろう。
一途に愛してきたはずのルチアを裏切った最低な男。
それだけでなく、シリルは王族としても相応しくない存在と知られることになった。
本来王家の瞳の力を持っていればウォルターやロニーのようにベルの魅了の力は効かないようだが、シリルは別だった。元々、王家の瞳にしては色が薄いことも関係していたのかもしれないが、完全にベルに支配され思考を奪われてしまっていたのである。
そんなことからも国民たちからの評判を一気に落とすことになったシリルは、この先は寒さが厳しいと噂の北部の僻地へと送られて、貧しい領主として暮らすことも決まっていた。
シリルはぼんやりと部屋に向けた視線の中、小さくまとまった荷物を見つめる。
そう、もう間もなくシリルは1人でここを離れることになるのである。




