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「まぁ…俺はこの絵を生きている2人に届けることが出来て良かったよ」
そう告げたミリウスは、手にしていた大きな包みから中身を取り出す。
手にしていたのは何かの絵なのだろうか?しかし、ルチアが絵を見る前に、ルチアの前には突然デリックが立ち塞がる。
「っ…お前それは、姉さんに見せるものじゃ」
「えぇ?こんなに出来がいいのに?」
焦ったような2人のやりとりがされる中、ルチアはミリウスが手にしたものが気になって体を逸らす。慌てるようなデリックの表情の先、見えたのは…こちらを見つめる視線だった。
「え…」
それはルチアが描かれた肖像画だった。
ただ、どうしてこんなにも違和感を感じるのだろう。描かれているのは確かに私である。けれど…絵の中の自分は驚くほどに穏やかな笑みを浮かべているのだ。
「…っ…私はこんな…」
「君をこんな表情にさせる男は1人しかいないよ」
ミリウスはどこまで事情を知っているのだろうか。
ルチアはそんなミリウスの優しさに、一気に胸が締め付けられるのが分かった。堪えきれず、目の前のデリックに縋るようにして泣き顔を埋めるルチア。
こんなにも優しい人たちに囲まれながら、自分はどうして死んでしまおうとなんて考えていたのか。
ルチアは未だに不安そうにするデリックの表情にも申し訳なさが募って、もう一度ゆっくり自分の気持ちと向き合おうと決める。
気持ちはまだぐちゃぐちゃである。もう全部が嫌になって、逃げだしてしまいたいと感じていたルチア。けれど、本当はこのまま1人で逃げ出したところで、きっと何も報われないだろうことは分かっていた。
シリルを奪ったベルには耐えがたいほどの苦痛を与えてやりたい。
そして…シリルともう一度、向き合いたい。
ルチアはまた傷つくと分かりながらも、この先を生きていくと決める。
自分を絶対に裏切ることのないデリックと、気遣うようにしてささやかに背中を押してくれるミリウス。
ルチアは彼らの前でだけは弱い姿を曝け出せる気がして、そのまま…子供のように泣きじゃくってしまうのだった。




