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「屋敷に用があって来たら、誰も応対してくれないけど馬車と明かりが見えたんだよ。別に頼まれたものを置くだけだしなーと思って入ってきたら…まさか血みどろの修羅場だなんてな」
優雅にお茶を口にしながら、ミリウスは困ったように笑みを浮かべる。
そう、あの扉から顔をのぞかせたのはミリウスだったのだ。
そんなミリウスの前で治療を受けるルチア。一方でルチアの切り傷に塗り薬を塗り、包帯を巻くデリックは酷く怒った様子で、会話に参加する気はないようだった。
「酷い姿を見せてしまったわね」
「いや、きっと絵にしたら話題になるくらいには刺激的だったけどなぁ」
からかうようにそう口にしたミリウスには、デリックの鋭い視線が向けられた。その視線は動きが凍る位には冷たいものだったが、ミリウスは「冗談だよ」なんて口にし、慣れているのはへらへらとした態度を変えなかった。
そもそもルチアにとってミリウスとの記憶は婚約破棄前のものしかないが、噂に聞いていた通り、彼は貴族を辞めて画家をしているようだった。元貴族なのにも関わらず、そんな雰囲気を一切感じさせない絵の具で汚れた服と適当に後ろにまとめられたぼさぼさの髪。
けれど、今の彼の方がずっと魅力的に感じるのは、彼にとってこの姿が本当の姿なのだろう。
それに、ルチアにとってはそんなミリウスが今でもデリックと繋がりがあることにも驚いた。ルチアが知る2人は以前、お互いに興味がなさそうに思えていたのだが…いつのまにか冗談を言い合うような関係にもなっていたらしい。




