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「ここも久しぶりね」
そういったルチアは懐かしい自室を見返す。
デリックにお願いして、秘密裏に国を抜け出して昔住んでいた領地のある公爵家へと戻ってきたルチア。両親は既に公爵家のことをデリックに任せて田舎で自由気ままに過ごしており、屋敷の使用人たちも今日だけ人払いをしていると聞いている。
ここはルチアの記憶にあった頃と同じ、変わらず静かで寂しい場所だった。
「確かに、こうして2人でお茶を飲むのも久しぶりだ」
そう話すデリックは、いつものように美味しいお茶を淹れてくれた。それはかつて、ルチアのためだけに週末に彼が帰ってきていた頃と同じような光景で、ルチアの瞳に涙が浮かぶ。
「私があの人を選ぶなんておかしなことをしなければ、きっとこんな日々が日常だったはずよね。私とミリウスは愛に振り回されることなんてない静かな夫婦で、そんな私たちをきっとデリック、あなたが支えてくれたはずだわ」
そう口にしながら、ルチアはお茶を口にする。懐かしい味はルチアの心をほっとさせてくれたが、お茶に映る自分の顔はみすぼらしく酷いものだった。
「別に今からでもいいよ。俺は姉さんがここに住むのは構わないし、父さんから俺に当主に変わって、公爵家の地位も万全になっている。それこそ、誰も口出しできないくらいには俺だって準備したから」
それはデリックからの優しい言葉だった。
そう、いつだってデリックはルチアの味方でいてくれたのだ。自分が…ベルを追い出すためにどんなに酷い計画を立てたとしても、側にいて協力してくれたのはいつだってデリックだった。
「そうね。…でもそれじゃぁ、貴方の結婚が遠のくじゃない。私だって貴方の子を抱いてみたいのに」
「いや…俺は」
「デリック、私ね、もう自分の子を抱けないかもしれないの」
そう告げた言葉に我慢していた涙腺が緩む。ルチアは驚いたようなデリックの表情を見た途端、色々な感情が一気に自分の中に溢れるのが分かった。




