第8話 競馬場にて
一時間くらい運転して、私たちは競馬場に着きました。
トラックにはハルだけでなく、志願した動物がたくさん乗り込んでいました。サクラやモモはもちろん、アヒルのアレクサンダーや、ブタのイノセントも一緒です。
メティスは「私はあまり競走には興味がありませんねえ」と、留守番を選びました。
競馬場に着くとハルは早速辺りを散策しはじめました。
駐車場から競馬場のスタンドまでのエリアは、本当はウマがいるようなところではないのですが、なんせここは競馬場なので、多少驚いた顔をする人はいても、誰一人係員に通報したりはしません。
むしろ「おんまさんだあ」と近づいてくる子どももいたりしたので、私たちはウマがいるがが当たり前のように振る舞いました。そうすると案外誰も気にしないようで、ウマ以外の動物たちがいても「何かのイベントかな?」と思ってもらえたようです。
「先生、ここにはウマはいませんね」
と、ハルが言いました。
「そりゃあそうだよ。みんな建物の中で出番を待っているからね」
「ふ~ん、そうなんですね。ではそちらへ行ってみましょうよ」
というわけで、私たちはスタンドの方へ歩いて行きました。そしてまずパドックと呼ばれるエリアに向かいました。
「なんというかヘンテコな場所ですねえ」
ハルはパドックを見てそう感想を述べました。
パドックというのは、競馬場の隣にある小さな楕円形の場所で、出走前のウマの様子を見ることができます。
間もなく出走するウマが順番に出てきて、ポクポク歩きながらその様子を観客に見せています。
大抵のウマは人に先導されてゆっくり歩いていきますが、中には暴れ回って周囲の人を困らせているウマもいました。
「ずいぶん気が立っていますね」
「まあこれからレースをしようというウマだからね」
「しかしあれでレースになるんですか?」
「うん、だからそういうウマにはお金を賭けないようにする。たまにはああいったウマが最終的にレースに勝つということもあるかもしないが、まあそうでないことの方が多いんだろうね」
「へえー、賭け」
ハルは再び興味深そうにパドックを歩くウマを眺めていました。ただすぐに飽きたようで、私に声をかけてきました。
「ハンナ、実際にレースをするところはどこなの?」
「え? 私も初めてだから分からないけど、この建物に入っていけば、その向こう側にレースのコースがあると思うよ。多分この建物が観客席、のはず」
振り返るとサクラやモモたちは、まだパドックのところにいました。
事前にしっかりと予習をしてきたアレクサンダーは、先生から強引にもらった千円札をくちばしにくわえながら、パドックを歩くウマに見入っています。アヒルは馬券を買えるのかしら?




