第6話 旅の準備
「ハル、さっきの質問の続きだが、私に来てほしいなら、電話や手紙を使えばよかったのではないかい?」
「それが駄目なんです」
とハルが答えました。
「今の皇帝は全ての手紙を検閲しています。国の中の手紙も、外国向けもそうです。電話も駄目です。電話でも手紙でもそれを使うには人間の手を借りなければなりません。人の手に触れたら、そのとき必ず皇帝のところに情報が伝わってしまいます」
「ケンエツって何?」
モモがサクラに尋ねています。
「ケンエツってのはほら、、、なんかとっても悪いことだよ」
サクラの回答はかなりあやしいものでした。
「中身をチェックするって意味ですよ」
とメティスが教えてくれました。
先生はハルの言葉を聞いて黙り込んでいます。
ハルは話を続けました。
「ですから私はここまで来て、直接お話しするしかなかったのです。前はこんなことはなかったんですが、すっかり昔とは違ってしまいました」
「分かった。ところで私たちは海を泳いで渡るというわけにはいかないから、それなりに準備を整えてから出発しないといけないけど、君はどうするんだい? 私たちと一緒に行くかい?」
先生が尋ねると、
「いいえ、私は少しでも早く国へ戻って、先生が来られるのを伝えたいと思います。急かすようで申し訳ありませんが、先生はいつ頃出発できそうですか?」
と、ハルは逆に質問しました。先生は少し考えてから答えました。
「そうだね。1週間もあれば準備はできるだろう」
「それでしたら私は一日か二日、この辺りで見聞を深めて、それからまた海を渡って帰ろうと思います。私の脚ならそれでも十分皆さんを現地でお迎えできると思います」
先生は電話をかけて、誰かにウマが食べられるものを持ってきてくれるように頼みました。先生にはこんな突然で突拍子もないリクエストに応えてくれる友達が何人もいました。
「ハル、夜になったら建物の中に入って休むといい」
先生が言うと、
「私は外で結構です。草原ではいつもそうしていましたから」
とハルが答えました。ただその夜は、ハルが思うようにはならなかったようです。
その後あまりウマを見慣れない動物たちに質問攻めにされ、ハルは結局建物の中に入って夜遅くまで動物たちに草原の話を聞かせる羽目になったのです。
私は家に帰らなければなりませんでしたから、これは後になって聞いた話です。それにそのときは、ハルがどうやって夜を明かすかなんて考えている余裕はありませんでした。
(私も草原に行きたい! そのためには何としてもお父さんとお母さんを説得しないと!)
私は強い気持ちを持って、気合いを高めて、家路についたのでした。




