第2話 朝食時のニュース
「ん?」
お父さんが急にテーブルから立ち上がり、テレビの方へと向かっていきました。
「どうしたの?」
私が尋ねると、
「いや、今何だか動物の姿が見えたような気がしたから」
テレビにはサーチライトが真っ暗な海を照らす様子が映っていました。それは私たちが住む街からそう遠くない海で、昨晩正体不明の動物が現れたというニュースでした。
お父さんはしばらくテレビの前でその映像を眺めていましたが、やがて、
「ウマのように見える」
とポツリと言って、自分の席に戻りました。
「ウマ!? ウマが海を泳ぐわけないじゃない」
と私は言いました。
「まあそうなんだけどね」
既に次のニュースに切り替わっていたので、その話はそれでおしまいとなりました。
私の名前はハンナ、10歳です。
至って普通の女の子のつもりでしたが、あることがあってからそれなりに変わった女の子であることを自認するに至りました。
「ハンナ、遅れるよ」
お父さんが少し強めの声で言いました。
お母さんはもう出勤した後です。お父さんも自分の準備で忙しそう。私は大急ぎでリュックを担いで家を出ました。
私は小学校に行くのが好きでしたが、学校の後にはもっと大好きなことがありました。
それはジョン先生のクリニックに遊びにいくことです。
ジョン先生はお父さんの学生時代からの知り合いのお医者さんで、街で自分のクリニックを開業しています。
そこは特別変わったクリニックで、様々な種類の動物が、診察室やその前の中庭にいて、自由に歩き回り、くつろいでいるのです。
イヌ、タヌキ、オウム、アヒル、ブタ、、、ほかにも様々な種類の動物がいました。
患者さんも、ここがそうしたクリニックであることは知っているので、今更クレームになることはありません。たまに飛び込みで入った患者さんが目を丸くしているのを見かけますが、「クリニックの中では動物を放し飼いにしてはいけない」という法律があったのかどうか思い出せないうちに、診察を終えて帰ってしまいます。
リピーターになる患者さんもいれば、二度と来ない患者さんもいます。先生は腕はいいので、そのままかかりつけ医になってしまうことも多いようです。
そうしたクリニックですから、実は患者でもない女の子が一人紛れ込んでいたって、誰も何も思いません。
もちろん私は診察を受けるためにここに来ているのではありません。
私の目的は動物の言葉を習うことでした。
あることをきっかけに、私はジョン先生が動物の言葉を話せることを知りました。
先生はみんなには内緒にするようにとは言いましたが、私に動物の言葉を教えることは躊躇しませんでした。
元々ジョン先生に動物の言葉を教えたのはオウムのメティスです。
私はジョン先生から動物の言葉を教わったり、先生が診察で忙しいときは、メティスにも教えてもらいました。
私はいつしか先生のクリニックに住むほとんどの動物と、直接会話ができるようになっていました。




