第12話 初めての外国でのレース
ハンナがやって来て、私がレースに出場することになったことを教えてくれました。なのでジョン先生が来て、今日の段取りを教えてくれたときも、特に驚きはありませんでした。
先生から言われたのは「ハープウィンドを引っ張ってやってくれ」ということだけです。
「分かりました。けどレース場の形は私の国のものとは違いますし、どうなるか分かりませんよ」
と私は答えました。
先生と別れた後、私は早速ハープウィンドのところに行ってみました。
「ねえ、あなたがハープウィンド?」
「そうだけど?」
「私も一緒に走ることになったから」
「え?! 今日? 急に?」
「そうよ」
私は自分の名前がハルで、海を渡って草原の国から来たことをハープウィンドに話しました。
「あなたはジョン先生って知ってる?」
「知ってるも何も! 僕の命を救ってくれた人だよ」
「へえ、一体何があったの?」
ハープウィンドは左の後ろ脚を持ち上げて、何度か地面を蹴りました。
「脚の病気にかかっちゃって、普通に歩けなくなっちゃったんだ。もう少しで僕は安楽死させられるところだった」
「え!」
「けど先生が病気の元になっている腫瘍を取り出してくれて、それで僕は死なずに済んだんだ。脚を動かせなくなったら、僕らはどのみち助からないから」
私は、さすが先生と思いましたが、ちょっと納得がいきませんでした。
「あなた、脚が悪いからってすぐに死ぬというわけではないでしょ? 見た感じこの国にはウマの天敵になるような動物もいないみたいだし、なんで殺されなくっちゃならなかったのよ?」
ハープウィンドは一瞬言葉に詰まりました。けどすぐに、
「だって、脚を怪我したら安楽死するっていうのが僕たちのルールだし……」
私はやっぱり変だなと思いました。
「まあそんなことより、今日のレースはよろしくね。ジョン先生に頼まれてるの」
「頼まれてるって?」
「あなたを引っ張ってあげてほしいって」
ハープウィンドは何も答えませんでした。さっきから見ていて思いましたが、パープウィンドは緊張しているのか、少し落ち着きがありません。
黙っている彼を見て、少し言い方が悪かったかなと思いました。そこで、
「あなたって速いんでしょ? じゃあなんで先生は私に出ろと言ったのかしら?」
と言いました。ハープウィンドは「速い」と言われてちょっと機嫌が良くなったみたいでした。
「よく分からないけど、僕はこのクラスのレースに出走するのは初めてだから、ジョン先生とヒガシクリさんが心配してくれたんじゃないかな?」
ハープウィンドが速いと思ったのは本当です。彼の筋肉は身体の各部位をみっちりと覆いながらもとても柔らかく、水で濡らしたように輝いていました。非凡な才能を秘めていることは間違いありません。
けれどもなんとなく何かをかばっているような、おそるおそる歩いているような、そんな雰囲気も感じました。




