第11話 先生の悪巧み
先生はヒガシクリさんに別れを告げると、私に話しかけてきました。
「ヒガシクリさんの厩舎にはハープウィンドというウマがいてね。今日の第7レースで走るらしい。ハンナくんは馬券の仕組みは知っているかい?」
「はい、お父さんがたまにやっていますから」
「そう、今でもやってるのか。そうか、それならいい方法があるかもしれない……」
先生は振り返って、ハルにウマの言葉で話しかけました。
ハルは軽くヒヒーンといななきました。
「何を話していたんですか?」
「いや、、、ちょっとしたビジネスの話だよ」
「ビジネス???」
私にはその意味がよく分かりませんでしたが、もうみんな競馬場のウマを眺めに行ってしまいました。
その後私はハルが一人になったところを見て、彼女に話しかけました。
「ハル、さっきは先生と何を話していたの?」
「ん? ハープウィンドというウマについて訊かれました」
とハルが答えました。
「それで何と答えたの?」
「いいウマですよ。ただ少し自分の力を理解できていないような気がしますね。誰かに引っ張ってもらえるとかなりのスピードで走れると思います。こんな感じでジョン先生にお伝えしました」
その頃先生はレース場の人と何か話しているようでしたので、私はそちらの方に向かっていきました。
「……分かりました。いいでしょう。ただし何位になっても順位には影響しません。当然馬券にも関係しません。あくまでも参考出場という扱いになります」
「結構です」
「では時間になりましたらゲートまでウマを連れてきてください」
「先生、何を話していたんですか?」
「ああハンナくん、ハルをレースに出場させる交渉をしていたんだ。OKだったよ。ただし記録は参考ということになる。もちろん馬券にも影響しない」
私は、本当にそれでいいのかな?と思いました。
レース結果からは除外されるとしても、ハルが出走したことでほかのウマのレース結果には何らかの影響がありそうな気もします。本当にそれで馬券を買った人が納得するのでしょうか?
先生は私の怪訝な顔を見て何かを察したのかこう言いました。
「まあ無理が通れば道理がすっこむというわけさ。さあ、レースの前にハンナくんのお父さんに電話を入れてくるね。ハルにも準備をするように伝えないと」
私は、
(なんでお父さん?)
と思いましたが、とりあえず私はその場を離れてハルのところに戻りました。




