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死の舞踏会と見える嘘⑥洋菓子たち

ヘルガ・バウマン→被害者。オットーの妻。

オットー・バウマン→ヘルガの旦那。

フレッツ・バウマン→ヘルガの息子。

マーガレット・ナイトレイ→フレッツの恋人。

アドリアン→ヘルガのお抱えの理髪師。


アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。

フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い。

セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。


 関係者の話を聞いた後、ブリジット、フィン、 セルジュ、アレク一行は会場に移動した。


 会場の主催者が会場の隅にテーブルと椅子をおいてくれたので四人とも座った。


  セルジュが会場からつまめるお菓子を山盛りおぼんに皿を乗っけて取ってきた。


「食べていいですし、使ってもいいですよ」


 ブリジットは軽く頷き、皿の上に並ぶ菓子を見渡した。テーブルの中央にシュークリームを置いた。


「整理しましょう。シュークリームは被害者ヘルガ様で」


「じゃあフレッツはカヌレで」


セルジュがカヌレをシュークリームの近くに置く。


「マーガレットさんはこれかな」


 フィンがチョコチップクッキーを手に取り、カヌレの皿に載せた。


「旦那のオットーはオペラ」


 アレクがオペラをシュークリームから少し遠めに配置する。


「では理髪師のアドリアンはエクレアですね」


ブリジットはエクレアもシュークリームから遠めに配置する。


 フィンが思い出したようにエクレアとオペラの皿を近づける。


「そうそう、庭で見た男の恋愛。こっそり二人会っていたよ」


 ブリジットはエクレアとオペラを見た。その瞬間、エクレアとオペラが妙に粘ついて見えた。両方とも甘いはずなのに、妙に喉に残りそうな色をしているように見えた。フィンが腕を組む。


「で,どこから考える?」


 ブリジットは今回舞踏会で目にしたヘルガに関わりの深い3つの嘘を思い浮かべた。



 『誰も触っていない』『体調に問題ない』『飲み物しか口にしていない』だ。


 まず一つ目の嘘、『飲み物しか口にしていない』だ。これは飲み物も口にしていない可能性がある嘘だ。実際、フレッツも"ヘルガは食事も飲み物も口にしていない"と言っていた。ブリジットは一つの仮説を立てた。


「まず、今回の毒をワインからとっていないと仮定します。そうすると、カヌレ、フレッツは犯人ではない」


セルジュが頷く。

 

「そうだな。フレッツは同じワインを口にしている。ヘルガにいたっては口をつけただけといってるからな」


セルジュが判断を下し、カヌレにフォークをつきさし一口で食べた。

「お、うまい」


 フィンがチョコチップを指差す。


「じゃあチョコチップ、マーガレットは?叩いた頬からポイズンリングの毒が入り込んだんじゃない?」


「ポイズンリングには毒が入ってるからな。接触毒の可能性だな」


アレクが頷く。セルジュが首を振った。


「ポイズンリングに入っていた毒とヘルガの血液中の毒とは違いました」


「じゃあ違うね 」

フィンがチョコチップを摘み口に入れた。

「うん、美味しい」


 ブリジットは二つ目の嘘について考えた。『体調に問題はなかった』だ。


「彼女は偏頭痛持ちですか?舞踏会の始まる前も最中も頭痛を訴えてたと証言がありましたね」

 

 ブリジットが問いかけた。


「いや、頭痛持ちではない。夫人がこめかみを押さえていたから、招待客が夫に確認していたからな。"健康は問題ない、偏頭痛もちではない"と言っていた」

 アレクが舞踏会の中で知った情報をだした。


「では頭痛が毒から来てるとします。彼女は事件の日、ずっと毒を盛られていた…つまり、毒は蓄積型」

 セルジュがつぶやく。


「即効性ではない。なら接触の可能性が上がるね。マーガレットは完璧に候補から外れる」

 フィンが結論づけた。


 ブリジットは三つ目の嘘の検証を始めた。三つ目の嘘『誰も触っていない』だ。


「では接触型の毒を仕込まれたとしてオットーだけは舞踏会で彼女に触れています」


「オペラ、オットーは怪しい。が、蓄積型だから今回の舞踏会で触れたは関係ないだろう」

 アレクが腕を組む。


「じゃあ継続的に触れることができる人物、マーガレット以外だね。フレッツはまた容疑者に浮上だ」


「そうだな。今の状況的に三人は確実に容疑者だ」


「じゃあいいか」


アレクはオペラを引き寄せ、フォークで一口サイズに切る。切ったオペラを口に入れた。

「まあまあだな」


「あー!まだ容疑から外れてないのに食べた!じゃあ俺も」


 フィンがアレクに指差して文句を言い、素早くエクレアを摘んで口に入れた。

「あ、美味しい。でも手がベタつく。チョコか」


フィンは手の指先が気になるのか紙ナプキンを探し見つけたナプキンで指先を拭いた。


「結局シュークリームは誰に殺されたんでしょうね」セルジュがシュークリームに手を伸ばす。


「あー、俺それもたべたかったのに」

 フィンがうらやましそうにセルジュを見る。


「エクレア食べたんだからいいでしょう。まだそちらにエクレアならありますよ」


セルジュが容疑者、被害者をとって残った洋菓子が置いてあるお盆を指差した。


「エクレアとシュークリームは別物!エクレアはチョコが手についてベタついたから今日はもうやめる。もう、エクレアってなんで表面にチョコついてるかな」

 

「エクレアのチョコがついた意味とか知りませんよ。私が取ってきたんだから食べてもいいでしょう」


「シュークリームは半分ずつにしない?」

 セルジュとフィンが小競り合いをする。


「エクレアは細長く絞ったシュー。シューを細長く焼いた時に膨らんで表面にひびわれがはいることからか表面に均一にチョコレートを塗るんだ。

二人とももっと食べたいなら会場から取ってきなさい。まだたくさんあるんだから」


 アレクが二人に注意をしつつフィンの疑問に答えた。


「アレクってお母さんみたい」フィンがその様子にたまらず言葉がこぼした。


「……おかあさん?」アレクが眉をひそめる。


「いや頼りにしてるって意味!ほんと!」


「……そうか」


 アレクは咳払いして話を戻した。セルジュがその隙にシュークリームにかぶりつく。


「あっ。これもうまい」


「セルジュ、クリームが鼻についてますよ」


 ブリジットが指摘し、ナプキンでセルジュの鼻先のクリームを拭いた。クリームはベタついていた。


「自分でふけ。ブリジット、甘やかすな」セルジュは飄々とアレクに小さく囁いた。

「嫉妬ですか?ふふふふ」


フィンがため息を吐いてしきりなおした。


「はいはい。今わかってる情報をまとめるよ。まず

毒は蓄積する毒」


「不自然に思われず長時間、接触させ続けられるもの。犯人は舞踏会の日に仕込んだ。普段は頭痛なんてないからな」アレクが真剣に合いの手をうつ。


「だな。なんだろうな。犯人は誰だろうな」

セルジュが適当に合いの手を打つ。


 三人の会話をブリジットはぼんやりと聞いた。


 

 何か引っ掛かるのだ。でも何が…


ブリジットは手元を見た。セルジュのクリームをふいたナプキン。視線をフィンの指先を拭いたチョコがついたナプキンに向けた。クリームの粘つく感触、フィンが言っていたチョコのベタつき。


 ブリジットはエクレアに指を伸ばした。触れた指先が、わずかにチョコが張り付く。チョコのベタつき… まるで、何かを貼り付けるためのものみたい。



…貼り付ける?


ーその瞬間、全部が繋がった。


「……髪」


「へ?」フィンがブリジットを見た。


「正確には頭皮。頭皮に毒を仕込んだ」


 ブリジットは指を擦った。指先に、わずかなチョコレートの粘り。セルジュがテーブルを軽く叩いた。


「…わかった。均一に毒を頭皮に長時間仕込むことができるものは一人だけだ」


 アレクがつぶやいた。

「なら、犯人はあいつだ」


 ブリジットは頷いた。

「ええ。犯人はあの人ですね」


「え!?誰?」

フィンが慌てたように聞く。


「裏取りしてくる」

 セルジュが走り出す。その背中を見送りながら、ブリジットは小さく息を吐いた。


「フィン、会場に容疑者を呼んでください。答えは出ました」ブリジットは静かに告げた。


「犯人はーー」


 ブリジットは、ある人物の名を口にした。

 三つの嘘。それはすべて、同じ方向を指していたのだった。



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