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死の舞踏会と見える嘘⑤関係者

ヘルガ・バウマン→被害者。オットーの妻。

オットー・バウマン→ヘルガの旦那。

フレッツ・バウマン→ヘルガの息子。

マーガレット・ナイトレイ→フレッツの恋人。

アドリアン→ヘルガのお抱えの理髪師。


アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。

フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い。

セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。

 関係者の待つ部屋へ移動し、簡単な紹介が済む。ブリジットはそれぞれに軽く会釈する。



 さて、誰が嘘をついているのかしら。


 ブリジットは周囲を一人ひとりに視線を滑らせた。落ち着かない者、目を逸らす者、やけに堂々としている者。


 フィンが手短に仕切る。


「では、順番にお話を伺います」


 最初に口を開いたのはフレッツ・バウマンだった。


「話が聞きたいのはこちらです。いきなり別室にあつめられて犯人扱いか!」


 動揺しているのか語気が荒い。


「すいません、調査が必要で」


フレッツがフィンの発言を遮った。


「犯人はマーガレットだ」


 フレッツは部屋の奥の椅子に座っているマーガレットを指差した。

 マーガレットはびくりと肩を揺らした。顔は青ざめている。


「マーガレットは母と口論していた!」


「それは…マーガレット様、なぜ口論を?」


フィンがマーガレットに目を向けた。

マーガレットの声は震えていた。


「あ、あの。わ、わたしフレッツと付き合ってるの。今日フレッツから別れ話をされて」


「ほう、マーガレットとフレッツは付き合っていたんですね」


 フィンはあの暗がりの庭で二人を確認しているのでとっくに知っているのに初耳のように情報を確認する。


「はい。私たちは愛し合っていたんですが、お母様の了承を得られないから急に今日別れ話をされたんです」


 マーガレットは声を震わせながら説明する。


「私はヘルガ様にフレッツの交際を認めてほしいと直談判したんです。それなのに」


 マーガレットは思い出したのか顔を赤くして憤る。目に涙が滲む。


「ヘルガ様はフレッツからそんな話は聞いていない。辺境を守る田舎者をフレッツが相手するわけないなんて嘘を!!」


 マーガレットが立ち上がりフレッツに迫る。


「そんなわけないですよね!!フレッツ様」


 フレッツが立ち上がり拳を握りしめて激昂する。


「近寄るな。人殺し!母を殺したのはお前だ!野蛮人なんて相手しなければよかった。お前が母を叩かなければ」


フレッツが唾を吐きながらマーガレットに叫ぶ


「まあ!」


 マーガレットがフレッツの言葉に衝撃をうけ顔色が青白くなる。


「わ、わたしのことそう思っていたのですか」


マーガレットの目が見開かれる。


「ああ。母を返せ」


フレッツが憎悪の眼差しでマーガレットをみた。

マーガレットは手を振り上げた。

フィンが即座にマーガレットの手を拘束した。


「マーガレットさん落ち着いて。フレッツさんも。人は叩かれただけでは死にません」


 アレクが拘束されたマーガレットの右手の指輪を見てぽつりとつぶやいた。


「変わった指輪だな。装飾が凝っている」


 アレクがフィンに囁く。フィンが頷きマーガレットを別室に連れて行った。


 ブリジットがアレクに目で問いかけた。 アレクが指輪についてブリジットにこっそり教えた。


「あれはポイズンリングだ」



 フィンが別室にマーガレットを連れて行ってるので、合流した セルジュが他の人の取り調べを行った。


「あなたたちはヘルガさんが倒れたとき何をしていましたか?」


 オットーはその場に立ち、腕を組んでいる。組んだ腕の上着の袖口には細かい刺繍が入っているのが見えた。

 丁寧に結い上げられた髪は、崩れておらず一筋の乱れもない。白髪の結い上げれた滑らかに流れる曲線は、熟練の理髪師の手によるもので美しい。


「そちらのアレク様と話していたよ。そうですよね、アレク様」とオットーがそう言って、顎でアレクを指し示す。


「ああ、確かに話していた。時間までは正確に覚えていないが、多分会場の悲鳴のときには一緒にいた。そこまで遠くではない」


 アレクがオットーの発言に頷く。


「私はブリジットさまのご友人のエマ様と話していました。ヘルガ様には近づけなかったです」


とアドリアンがちらりと控えめに横目でブリジットを見た。ブリジットはその言葉に少しだけ違和感を持った。



 エマがずっとアドリアンにセットできないかとわがままいったんだろう。


 でも、五時間もかけて髪を整えた人物、ヘルガにその後は一度も近づいていないのは少し不自然ね。


「俺は母の近くにいた。母から離れたときもあるが、母は"何も食べていないし飲んでいない。髪について質問が多くて話すのに忙しい。それに頭痛がするから食欲はない"と言っていた」


 息子のフレッツが母の状況を含めて言った。夫のオットーに比べたら衣装が簡素で少し小物感あるが、フレッツも背筋を伸ばして立っている。髪はしっかりと結い上げられオットーともに乱れていない。


 セルジュが状況確認を追求する。


「では、三人とも舞踏会に入る際はヘルガ様と一緒に入ったんですか?」


「ああ、一緒に入ったがほとんど一緒にはいてない。最初だけだ。私は彼女には触れてさえいない。たしかに入る時も頭痛がすると言っていたが大したことではない」


 オットーがバカにするように話した。


「どうせワインに毒が入っていたんだろ。何らかに毒が入っていて使用人の不手際だろ」


『ワインに毒が入っていた』


 浮かぶ言葉。嘘。


 ブリジットは動揺しながら彼の状態を観察する。オットーは貴族らしく尊大な態度だ。


「親父、マーガレットが犯人だ。」

 フレッツは元交際相手が犯人だと断言する。


「それは違う。彼女は辺境のものだ、武力を行使するが毒は使わない」


 オットーは眉毛を器用に片方だけあげる。ブリジットはオットーとフレッツを観察する。


 オットーはマーガレットをヘルガを殺したと思っていない…それとも同じ貴族同士から犯人をだしたくないからかばってる?


 彼はワインに毒が入ってないと思っている。これは犯人はオットー?それとも…


 フレッツはマーガレットが犯人だといいすぎではないか。交際相手だったのに。


「親父。俺も同じワインを飲んだし母は口をつけただけだ。だからワインが原因かではない」


 フレッツが反論する。オットーはフレッツの発言に眉を寄せた。ブリジットは思案した。



 オットーはワインに毒が入っていないとそう思い込んでいるのか…息子も同じワインを飲んでいたから安全だと思い込んでいるのか。しかし、フレッツはヘルガはワインを飲んでないとも言っている。


 オットーが犯人?なら動機は?また、オットーはヘルガに触れていないとわざわざいうのも違和感がある。


 違和感といえば、理髪師なのに全く接触をしなかったアドリアンも違和感がある。アドリアンが犯人?

 今の犯人第一候補のマーガレット?それとも、犯人はオットーの言う通り使用人?さっぱりわからない…


  セルジュが更に情報を探る。


「ヘルガさんはどういう方でした、できればよくない点を具体的に」


「そうですね。妻としては申し分はないのですが、プライドが高い妻だった。正直折り合いがとれず、彼女の要望に応えるのに辟易するときもありました」

 

「なるほど」セルジュが頷く。


「彼女は感性に敏感でした。その反面、細かいところまで指摘するナイーブなところもあり、疲れることもありました」


 アドリアンが雇い主なので言いにくそうに発言する。


「母の悪い面はプライドが高くヒステリックでしたが、倒れるような持病などありません。今日は頭痛を訴えていました。

そういえば親父、少し乱れていると言って母の髪に触れてたな」


「そうだったかな」


 ブリジットはオットーの様子を確認した。動揺している感じはなかった。



 やっぱり彼女に触れていた。しかし純粋に忘れていた可能性もあるし…完全にオットーを白にはできない。悩ましい。




 でも彼女はワインで死んだわけではない可能性が高い。ワイン以外で毒は仕込まれた。


ーーそれは何?




 


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