第2章
家に着くと僕はかばんを放り投げ、TVのスイッチを入れた。
そんな僕の様子を母が怪訝そうに見たが、そのまま夕食の準備を続けている。
帰りが遅くなったから、もうニュースは終わってしまっているだろうか?
それとも西村が『大騒ぎ』と言ってた位だから、特番になっているだろうか。
期待しながら画面を見つめたが、もう普通の番組をやっているようだ。
ただ画面上部に『臨時ニュース』として情報が流れている。
「あら、一登。その番組好きだっけ?」
食事の用意を終えた母が肩越しに覗き込むようにTV画面を見た。
「違うよ、臨時ニュースの方。僕の使ってるバスの操車場で事件があったっていうからさ」
「へえ、操車場で事件なんて珍しいわね」
母親も同じことを言っている。
まあ、それが普通の反応なんだろう。
二人でTVの画面を見つめていたが、西村からのメールの内容以上の事は流れない。
(やっぱりネットで調べてみるか。)
僕は自室のパソコンへと移動しようとした。が、
「一登、もう夕食できてるんだからっ!」
と言う母の言葉に、自室へ行くのをあきらめて、食卓についた。
(母さんをキレさすと、あとが面倒だからな…。こんな事ならTVじゃなく、いつもの様にネットを先に調べればよかった。)
食事を早々に終え、自室のパソコンの電源を入れる。
起動時間がいつもより長く感じられ、ちょっと苛立つ。
やっとパソコンが起動し、掲示板を調べると、ネットでは色々な情報が交錯していた。
まあ、ちょっと大きな事件があれば、色々な書き込みが出てくるけれど、今回は特別な様だ。
どの書き込みが信憑性があるのか、僕も悩む。
他の事件ならガセネタは大体見当がつく。
でも、今回の操車場の事件は、事件そのものが奇妙で、面白がって適当なことを書くヤツも多いみたいだ。
ただ、TVやネットの情報で共通してるのは、二人の犯人が侵入後、拳銃を持って操車場にいた従業員を脅し、売上金を奪って消えた。という事。
ネットでの書き込みは、その『脅された従業員の狂言』または『従業員共犯説』が多い。
まあ、『犯人が突然消えた』という部分を見たら、そう考えるのが一般的だろうな。
あとはメディアのドッキリ説もある。操車場の事件でそんなに早く報道関係者が集まったのが理由らしい。
でも、警察まで動いてるし、ドッキリだったらとっくに『ネタばらし』しているだろうから、これは違うだろう。と僕は思う。
結局、この事件について憶測を越える物はまるでなかった。
僕はディスプレイから視線をはずし、伸びをした。
蛍光灯の眩しさにちょっと目を細める。
そして、バスを待つ間気になっていたあの店のことを思い出した。
(バスが遅れなかったら、あの店に気づきもしなかったな)
とりあえず、学校の近所に住んでいる西村にメールを打つ。
『バス操車場の事件、相変わらず何の進展もないみたいだな。ところで、バス停の近くに 古びた店 あるの知ってるか?』
送信ボタンを押す。
すぐに返事が返ってくる。
(やっぱ早いな、西村)
『え?どこに?あそこら辺、よく通るけど、桐野が言ってる店は分からん』
(西村も知らないのか!?生まれた頃からあそこら辺にすんでるのに…しかも西村は情報通なのに)
『明日ヒマ?ヒマだったらちょっと見に行かないか?』
『OK!』
(操車場事件も、古びた店も、今日はもうあきらめよう。)
明日、また調べる事にして宿題に取り掛かる事にした。




