第七話
皇子は部屋の扉で待機している使用人に自分が来たことを伝えるように指示をすると、使用人は執務室の中に入っていく。
しばらく待機していると、扉が再び開かれて、中に入るよう促された。
親子といえどもこうした手続きは緊急時でもない限り必ず必要となってくる。ここでもレナードはめんどくせえと思ったが今度は口に出さなかった。
ラスティと共にルレン、レナードは執務室に足を踏み入れた。
途端にラスティの姿が視界から消え去り、思わず戦闘態勢を整えてしまう。剣を抜いていればあっというまに執務室に待機している護衛兵と刃を交えることになっただろうが、ぎりぎりで剣を抜くということを理性で押さえつけて大事には至らずに済む。
「おおおおおおおお! くゎいいいラスティよ! よくぞ戻った! うんうんお前が貧民街に足を運ぶと聞いた時は父は倒れかけたのだぞ! どれこの父に、そのかわいい顔をよく見せてくれ? 変わっていないようで何よりだ」
熊のような大男にラスティは高く抱き上げられていた。
頭は禿げていて、後ろ髪だけがわずかに残っている。足元まである赤い毛皮のコートを身にまとっていて、顔の下半分は髭に覆われている。目は息子を抱き上げているせいか今はふにゃふにゃとしていて、皇帝の威厳のかけらもない。
「ち、父上! 下ろしてください! というか今朝方あったばかりでしょうが! そんな簡単に変わらないですって!」
「何を言うか! くぁいいお前が、外に出てその顔に傷でもついたら……父は父は……ふおおおおおおおお!」
いきなり涙を流して泣きはじめる皇帝、それを見ていたレナードとルレンはあっけにとられてしまう。
いやもう何から突っ込めばいいのか……というか傍から見ていたら、かわいい少年に迫る変態中年という言葉がぴったりすぎるくらいだ。
「ともかく離してください! 見慣れている護衛兵はともかく、僕の連れのものが驚いていますから!」
「じゃあキスしよう! なな? お帰りのキス」
「全力で拒否します! 絶対に嫌です!」
「ちょっとだけちょっとだけでいいから! ラスティちゃんお願いだ」
「嫌なものは嫌です! 勘弁してください!」
「すぐに終わるからさあ。ほんの少しだけ! 先っちょをちょっとだけでいいから!」
「なんの先っちょですか! とっても聞きたくないですけど! いい加減にしてください」
限界を迎えたのか思わず頭突きをするラスティ。
痛さのあまり顔を抑えるため、そこでようやく解放された。
絶対権力者である皇帝陛下に手を挙げるなど、例え親子であり皇子であっても下手をすれば文字通り首が飛ぶことになりかねない行為だが、この城では特に問題にはならないようだ。
なぜなら皇帝陛下自身が、痛がりながら笑みを浮かべているからである。
「痛いけど嬉しいなあ」
「……侍医を呼べ……父を隔離する」
その言葉にその場にいた兵士全員が、足並みをそろえるようにあわただしく動き始める。
「冗談だよ! ラスティちゃん! いきなり反乱を起こさないでくれ! お前たちも動くなよ! 皇帝陛下より皇子を取るなんて悲しいぞ!」
「皇帝陛下なら僕の連れの前で変なことを言わないでください」
そこで皇帝はようやくレナードとルレンの存在に気付く。
「よし、処刑」
「はええよ! なに? このおっさん! いきなり処刑とか過激すぎんだろ! 何の罪だよ!」
思わず皇帝をおっさん呼ばわりしてしまうレナード。おまけに貧民街の言葉そのもので突っ込んでしまった。
「うむ。今の言葉は十分皇帝に対する不敬罪だな。この私をおっさん呼ばわりとは」
「順番がなんかいろいろと間違っていますよ! なにこの国? 大丈夫なの?」
敬語はあまり使い慣れていないせいか、時折無礼な言葉が混ざってしまう。
「……僕も自信なくなってきた……ともかく父上。いきなり処刑はないでしょう。それに彼らはグローリアたっての願いでこの場に来ていただいた者たちですよ?」
「グロちゃんの願いだと……貴様ら……ラスティちゃんだけでなくグロちゃんまで毒牙にかけるつもりか!? ギルフォードを呼べ!」
「父上! 落ち着いてください! 何をとんでもない勘違いをしているのですか! それと何度も言っているようですけど僕は男ですからね!? わかっていると思いますが」
「ラスティちゃんの女装姿も可愛かったよな……うんうん」
執務室に飾られていた鉢植えを皇帝の頭に天使の微笑みをヒクつかせながら叩きつける。
「おおおお……い、痛い……ラスティちゃん。もう少し手加減を……」
「思い出したくない過去を思い出させないで下さい。いい加減、話を進ませたいので、まずグローリアをこの部屋に呼んでください」
ため息を吐きながら、使用人に自分の妹を呼びに行くように命じる。
いきなりの騒ぎにレナードもルレンも目が点になっていて、対応が出来なかった。
使用人が出て行ってしばらくの間、執務室は無言に包まれている。
レナードとルレンはいつでも逃げだせるように心の準備をしておく。
皇帝が鋭い眼光で二人を睨んでいるからだ。
特にレナードをなぜか憎々しげに睨んでいる、はっきり言って会ったこともない皇帝になぜにここまで敵意をぶつけられなければならないのかさっぱりわからない。
ともかく難癖つけて殺されるくらいなら、徹底的に暴れまわって逃げ出してやると考え心の中で臨戦態勢を整える。
やがて、執務室の扉が開かれて、紫色のウェーブのかかった柔らかそうな髪質を持ったかわいらしい少女が元気よく入ってくる。
その後ろには、30代半ばくらいの精悍な顔つきに、不揃いに切りそろえられている黒い髪をした、無精ひげを生やしている剣を携えた男性もついていた。
目つきは鋭く、その雰囲気は一流の剣士のみが纏える空気を醸し出している。
レナードは一目見るなり、ありゃつええなと感心してしまった。
「父上! お呼びと聞きましたがいかがなさいましたか?」
自分の父である皇帝に軽く一礼をして、用件をうかがう。
「うむ。今晩は後宮で過ごさず。ラスティちゃんとグロちゃんに添い寝してもらおうと……」
言葉の途中で執務室の一角が大爆発を起こす。
グローリアがいきなり魔法を放ったのだ。
「父上? 私に何か恨みでもあるのでしょうか? 拷問よりなおひどい仕打ちを実の娘にするなど……私にどんな罪があるのですか?」
実の娘に添い寝しようと提案しただけで、拷問扱いとは……思わずレナードは同情してしまった。
だが、先ほどの皇帝の態度を見れば無理もないかもしれない。確かにこの皇帝なら添い寝にかこつけて過激なことをやりかねないと思ってしまった。
「ラ、ラスティ聞いたか? 父がこんなにも愛しているというのにグロちゃんのこの仕打ち」
「妥当な判断だと思いますよ。むしろグローリアがやっていなければ僕がやっていました」
「……父は悲しい」
一気に落ち込む皇帝陛下。たぶん一般庶民では見ようと思っても絶対に見れない事柄だ。みたいかどうかはともかく……。
「あら、兄上、お帰りになっていたのね……ってことは?」
グローリアが視線を動かすとレナードの姿が目に入る。
「おお、よく来たな! うむうむ。あれから調べたのだが、まさか伯爵家の者だったとはさすがに驚いたぞ。ま、まあそうだなせっかくだしこれからそばに置いてやるから忠勤に励むがよい」
「……」
「どうした? 心配するな手続きはすべて終えてある。そなたは今日から私のガードとなる。先日助けられたお礼だ」
「……」
話が見えない。こんなガキに見覚えないし、いきなり忠勤に励めとか言われてもなんのことだかさっぱりわからないし、ガードって何? という状態だ。
助けを求めるようにルレンに視線を向ける。
ルレンも混乱しているようだ。
「あ、えっと皇姫様? 何をおっしゃっているのかさっぱりわからないのですが?」
レナードが思ったことをそのまま口にした。
グローリアはこの言葉に疑問を覚えた。なぜならば、この男は自分に惚れているはずなのだ。それを喜ぶ様子もなく「何のことですか?」と言われればどうしようもない。
しかし、彼女はラスティと同じように皇族の教育を受けている身分で、ある意味聡明な部分を持っている。
ここで下手に喜んでしまえば、自分の父、すなわち皇帝に私への恋心を悟られてしまうと彼は警戒していると考えてしまった。
なるほど、父のみならず、周りの人にもばれるわけにはいかない。自分への恋心を貧乏貴族が持つなどいろいろと問題になってくる。おまけにそうした人物を自分の傍に置くことなど絶対に許可など出るはずがない。となると、こうして全くそ知らぬふりをするのが一番良いと考えているのだろう。
そこまで考えてグローリアは、なかなか頭のまわるやつだなとほくそ笑む。
顔もそれなりに整っているし、腕っぷしもある。落ちぶれているとはいえ伯爵家である。これはもう自分の傍に置くには十分すぎるほどだ。キ、キスくらいなら……誰にも見られなければしてもも、問題にはならないだろう……そ、その先は……さ、さすがに皇族の身だし……そ、その……。
「……ね、熱でもあるのか! グロちゃん! 侍医を呼べ! グロちゃんが熱を出した!」
顔を真っ赤にしている自分の娘を見て大いに慌てふためく皇帝。
ラスティは自分の双子の妹が何を考えているのか手の取るようにわかってしまい顔を覆ってしまう。
まあ、いつもの熱病だし、このレナードという男が少女趣味でもない限り余計な心配はする必要ないので特に何も言わずに黙っている。
皇帝の声にグローリアは我に返る。
「お父上。心配はいりません! ともかく、用件はわかりました。このレナードという男は私のガードにすることにしましたので、連れてきてもらったのです」
「……グロちゃんのガードだと? こんなわけのわからない小僧を?」
いきなり雰囲気ががらりと変わる。
先ほどまで天気がよかったのに雷雲が急に立ち込めたようだ。
「よし、拷問官を呼べ。新たな処刑の仕方を開発せねばならん!」
「だから処刑される意味が分からないんですけど!?」
悲痛な叫びをあげて皇帝相手に抗議するレナード。
「訳の分からない小僧じゃありません。父上! いいですか? この者はハルヴァート家のご子息です! れっきとした貴族に連なる者なのですよ?」
グローリアの強い口調に皇帝は押し黙り、記憶をたどる。
ハルヴァートなんて貴族いたかな? と思い出そうとしているが記憶に出てこない。
そこへ、グローリアと一緒に来た30代半ばの男が口を挟んだ。
「ああ、思い出しましたよ……ハルヴァート家と言えば、確か以前にフルブラント公爵家との婚姻を結ばれた家ですね」
フルブラント公爵家とはこの国の騎士団の一つを預かっている家柄で、帝都から東の平原地帯一帯を収めている、由緒ある家柄の一つだ。
国境地帯を任さているだけあって、皇家からの信頼も絶大なもので、現当主は勤勉で実直、野心など持たずにしっかりと己の任をこなしている人物だ。
「ギルフォード。そなたはこの者らに詳しいのか?」
皇帝は声を発した男に問いかける。
ギルフォードと呼ばれたこの男は、エンペラーガードに任命されている男で、剣技の腕前であれば帝国で一、二を争う人物だ。先に現れた一つ目程度なら問題なくあしらえる強さを持っている。
「詳しいというほどでもありませんが……確か先代のハルヴァート家の当主と、その当時のフルブラント公爵家の第二ご息女が婚姻したのですが、ハルヴァート家の当主が浮気癖がひどく、側室だけでは飽き足らず平民、奴隷手当たり次第に手を付けて、離縁を叩きつけられ、さらに当時のフルブランド公爵家を怒らせて、当時持っていた役職をすべて剥奪され、皇宮から追い出された家です。伯爵の称号を奪われなかったのは僥倖とも言えるでしょう」
誰も言葉を発しない。レナードすら知らなかった事実を明かされ、何も言えなくなってしまう。
静まり返った執務室で最初に言葉を発したのは、グローリアであった。
「ま、まあ、先祖の罪が今にまで及ぶのはさすがに酷であろう……と、ともかくこの者達にもチャンスを与え皇家の慈悲深さを世に知らしめるべきではないかと思います。いかがですか? 父上?」
「ダメだ! 好色が過ぎて身を滅ぼすような家の出身の者に大事なグロちゃんを任せられるわけないじゃろ! 万が一のことがあったらどうするつもりだ!」
「もう少し私を信用してください! その万が一っていうのは何を心配なさっているんですか!」
「そ、そりゃ……もちろん……その、ベッドの上でくんずほぐれず……は、鼻血が」
何を妄想したのか、皇帝の鼻から赤い液体がポタリポタリと滴る。
ラスティは大きくため息を吐く。どこの世界に自分の娘のあられのない姿を想像して興奮するバカがいるのか……ましてや、それがこの国においての唯一の絶対権力者であり、自分の父となんと情けないことか……。先ほどレナードが言ったように本当に大丈夫なのか? この国はと思わずにはいられない。
「そ、それにだ! 皇家のガードになるためには人格と実力が必要になってくる! 見ろ、こいつの貧相な顔を! こいつは絶対にダメ人間だ!」
「そんなことありません! この方は一つ目相手にたった一人で立ち向かう勇気をもった崇高な方です!」
「ほう……先に出没した一つ目を倒したのは君か?」
ギルフォードが感嘆の吐息とともにレナードに声をかける。
「あ、えっと……そうですね」
なんでもないというように功を誇るような真似をせずに、素直に答えるレナード。
そのやり取りを見ていて、満面の笑みを浮かべたのはグローリアだ。
「お聞きになりましたか? 父上。たった一人であの凶悪な魔物を打ち取り、その功を誇らしげに語るでもなく、なんと謙虚なことか。私のガードに充分ふさわしいと考えます」
「あの、ちょっといいっすか?」
レナードが遠慮がちに手を挙げて声を上げる。その声にこの場にいる主要人物の視線が降り注がれた。さすがに皇帝の執務室に集まる人物たちだけあってその圧力はかなりのものだ。
単に無神経なのか、それとも図太い性格ゆえなのか定かではないが、ここでレナードが発言する。
曲がりなりにもここに居並ぶ人材は帝国の命運を背負っている人物たちだ。そんな人物たちを前に彼は緊張のかけらも見せない。
「俺らがここに連れてこられたわけってのが、いまいち把握できていないんですが?」
グローリアはその音場を受けてラスティのほうへと視線を向けた。
「兄上? ちゃんと伝えていなかったのですか?」
「色々あってな。伝える暇がなかったんだよ……」
「兄上ともあろうお方が、ずいぶんと手際が悪いですね」
「……」
ラスティは言いたいことがいろいろとあるだろうが、何を言っても言い訳にしかならないし、いささか疲れてきていたので反論するという選択肢を捨てて無言のまま肩をすくめる。
グローリアはそのままレナードに向き直り、ニコリと微笑みをかける。
ラスティの妹だけあって可愛らしい子供ならではの素敵な笑みだ。
レナードはその笑みを受けても怪訝な表情のままである。
「少し遅くなったが、まずは先日、私を助けてくれた礼をさせてもらう。私の名はグローリア・コーディ。この国の第二皇女であり、ラスティ・コーディの双子の妹だ」
そこでレナードはようやく彼女の顔を思い出す。
先日、一つ目を仕留めた時に見かけた少女だ。あの時はあわただしかったせいもあり、特に気にすることはなかったのだが、まさかあの時の少女が皇女様とは……皇子も皇女も城を抜け出すのが大好きな性格とはな……と他人事のように考える。
「はあ……」
頬を指先でポリポリかき生返事をする。というかそれしかできない。皇子に皇女に皇帝がずらりとこの部屋で並んでいるのだ。
先日までそのような雲上人とまったく縁もゆかりもない彼にとってはどうすればいいのか把握しかねている。
「それでだな。お前のことを少し調べさせてもらった。聞けば先祖の愚鈍さに泣かされ今ではすっかり落ちぶれているそうじゃないか。栄えある帝国貴族……しかも伯爵の称号を持っている者がなんと悲しいことか……ゆえに私は先日の礼も含めてお前を我がガードの一員として迎えようとここに来てもらったというわけだ」
「……俺が? ガード? 皇宮で?」
「そうだ」
さて、どうすればいい……ガードの存在は知っている。いわば皇族の親衛隊、まさに選び抜かれた精鋭によって組織されているこの帝国において最高峰の存在だ。
しかし、レナードとしてはそれほどありがたいものとは感じない。貴族であるならば誰もが名誉であると考える職務だが、彼は名ばかりの貴族で名誉より金を重視する。というより名誉を求める志向がまったくなく、その辺は一般の平民と考え方があまり変わりない。ガードになれるぞと言われてもいまいちピンと来ないのだ。
皇女は「すごいだろ」と体全体で誇らしげに語っている。
「じゃから……グロちゃん。ダメ! 絶対ダメ! わしをおっさん呼ばわりするような礼儀知らずをグロちゃんの傍におくなんて……」
「お父上をおっさん呼ばわりですか……ついでに頭に変態をつけてあげると完璧でしたね」
「ひど! グロちゃんひど!」
「あと、そのグロちゃんって呼び方もやめてくださいと何度も言っています! ほんと気持ち悪いんですから」
皇帝の頭に雷鳴が直撃したように彼はその場で倒れこんだ。実の娘から「気持ち悪い」と言われたことに相当なダメージを受けたようだ。
「おおお、頭から白い煙が上がるやつなんて初めて見たよ」
「うるさい!」
レナードの言葉に対していきなり復活する皇帝。
「貴様……わしの可愛いグロちゃんに何をした!」
「なんもしてませんよ!」
「……ふん。まあいいいわ……ガードになるためにはそれ相応の実力が必要となる。そこのギルフォードに勝てぬようでは話にならぬ。もし貴様がどーしてもガードになりたいというならそやつに勝ってみせろ」
「興味ないんで失礼しまーす」
あっさりとガードになることを拒否して部屋を出ようとしたがいきなり剣を突き立てられ動きを止められてしまった。
入り口の傍にいたギルフォードが、音すら立てずに剣を抜き放ちレナードに突き付けたのだ。
「お父上。レナードはその挑戦を受けると言ってます」
「言ってねえよ! 失礼するってはっきり言っただろーが!」
「自ら処刑されたがるとは……その心に免じて楽に殺してやるよう取り計らってやる」
「話聞けよ! お前も皇帝陛下の御前で武器を抜くっておかしいだろ!」
後半はギルフォードに向けられた言葉だ。
「ギルフォード。抜刀を許可する。ついでにこの部屋を血で汚すことも許可しよう」
「だから順番おかしいから! おまけになんでそんな物騒な許可出すんだよ!」
「うむうむ。さすがレナードだな。私の傍にいるためならその命を惜しまぬとは……ふふふ」
最後の言葉になるにつれ、顔を赤らめていくグローリア。その様子を見て皇帝はさらに憤慨する。
「皇子様! 何とか言ってくださいよ! あんたの家族いろいろおかしいよ!」
「父上……ギルフォード相手ではどんな人物でも試験に合格することなどできるわけないじゃないですか……もう少し手加減してやってください」
「試験の名を借りた処刑じゃからな」
「……骨は拾ってやる。レナード。ここまで連れてきてしまった僕にも多少の罪悪感はあるからな。墓は立派なのを用意してやる」
「嬉しくねえよ!」
皇帝の怒りがすさまじいものがあったので、ラスティは自分の父を諌めるのをあきらめた。
この場において唯一無言だったルレンはいつ逃げ出そうかなーと考えていてこの騒ぎにはまったく参加していなかった。




