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第21話、父親の裁判と魔王の進行

 ――王都の裁判所にて。


 国王陛下が緊張した面持ちで、罪人であるライゼル村のライこと、ライオネット・レッドフィールドの裁判を行う。


「被告人のライオネット・レッドフィールド!」

「はい」


 国王陛下に呼び掛けられて、反応して返事を返す男は素直に応じていた。

 周囲では、その遺族であるライゼル村のライの妻マリア、兄のラルク、姪のレーナ、ライの付き添いで付いて来たソニアと、ライの息子であるアルスも居る。

 獣人族の長であるゼイン、その妻レイアとその娘のレイナも同席していた。


「被告人の罪状を申し上げる、危険薬物の所持及び製造と今回のクーデターの加担した事に間違いは無いのだな?」

「はい」


 一方で、レイナちゃんと勇者の俺はというと――。


「なんだか難しいお話してるね?」

「そ、そうだね……」


 ――レイナちゃんが隙を見てゼインさん達のところから、俺のお膝の上に来てちょこんと座っているのだ。


 家族の裁判中なので、さすがににやけるのは良くないと思いつつも。

 ピョコピョコ動く尻尾や、ケモ耳が堪らなく可愛いのだ。

 不意に見せる『エヘヘ』という天使の様な笑顔と、俺の膝元のレイナちゃんの体温が、俺に謎の戦いをさせようとして来る。


 ――レイナちゃんを撫で撫でしたい、抱き締めたい、という謎の俺の心の声との戦い。


「どうしたの?アルスお兄ちゃん?」

「なんでもないよレイナちゃん」

「そう?エヘヘ…」


 ――俺は一体何と戦っているんだろう?


 俺の母親のマリアと従姉のレーナ姉さんとソニア婆ちゃんが向こうでクスクスと笑っている。

 エレイナは不機嫌そうだ『ふーん?』という顔をしている。

 ゼインさんは、俺の方を見ながら笑顔で親指を立てている。

 レイアさんは『さすが私の娘』と言っているかのように自信満々に笑っている。

 ラルク伯父さんは『やれやれ』という顔をしている。


「被告人を無期奴隷に処す」


 ――下された判決は『無期奴隷』文字通り無期限の奴隷として働くという物だ。


 王都キングダムウォールでの奴隷として働くという内容だった。

 死刑を求刑しなかったのは、王様の計らいによるものでさすがに無罪放免とはいかなかった。


「何か言い残す事はあるか?」

「いえ…何もありません…」

「以上により、ライオネット・レッドフィールドの裁判を終える」

「次に、エルフ族の処遇だが…」


 エルフ族の処遇はエルフの里で族長ユリウスさん達に委ねられた。

 こちらもさすがに無罪放免とは行かず、クーデターを起こした罪と危険薬物に加担した罪により、王都キングダムウォールや周辺の近隣故国への出入りが禁止された。

 エレイナは加担していなかったので、無罪だが…エルフの里での対応に一任する事になった。


 俺の父親のライは、俺と母親のマリアと伯父のラルクに「すまなかった」と謝罪して騎士団達の皆さんに連れて行かれた。

 後から聞いた話だが、俺の父親のライが危険薬物こと危険な薬草やハーブに手を染めた理由は、農業による収穫の稼ぎだけでは厳しかった事、一時的な快楽の為に自分自身も使用していた事、使用や栽培の最中にエルフ族の皆さんに見付かり、誰にも話さない代わりに今回のクーデターの手伝いをしろと言われた事等らしい。


「だから誰にも相談出来なかったんだな?」


 母さんのマリアもショックを受けていたし、伯父さんのラルクさんも頭を抱えていた。

 ソニア婆ちゃんも心配そうな顔をしていた。

 俺はそこで、


「安心してよ、マリア母さん!ソニア婆ちゃん!ラルク伯父さん!…俺が勇者になったからにはライゼル村のみんなを元気付けてみせるから!」


 元気を出して欲しい一心で、そうマリア母さんとソニア婆ちゃんとラルク伯父さんに言う。


「まあまあ、フフフ…」

「おやおや大した自信だねアルス?」

「生意気を言う様になったじゃないか?」


 ――よかった元気になってくれたみたいだな?


「この勇者の剣に誓ってね」


 向こうからエレイナがアルスを見ている。


 ――アルス、本当に強くなったのね?私は…


「エレイナ様」


 執事のクーデルが落ち込んでうつ向くエレイナの肩そっと手置いて話し掛けた。


「何?」

「私は思うのです、アルス様は確かにお強くなられました…ですがそれはエレイナ様がお側に居られたからではありませんか?」

「……」


 ――まあ確かに、アルスには私が居ないとダメなところもあるものね?


「なんか気持ちがスッキリしたわ、ありがとうクーデル」

「いえ…」


 すると、レイナの母親のイレイナがクーデルに話し掛けて来た。


「ほう、やるじゃないか?…」

「いえ…(わたくし)は執事としてもエレイナ様には元気で居て欲しいのです」

「然り気無く…精神安魔法のリラックスケアーを使っていたね?…アタシでも気付かない程静かにね?」

「あんた、只者じゃないね?」

「いえ…(わたくし)は只の執事ですよ?」


 そこへ、


「大変です!」

「何事だ?」

「魔王とその軍勢が攻めて来ました!」


「魔王?」


 ――魔王が来た?…何しに来たんだろう?まあいいか、やることは変わらないし


 アルスは勇者の剣を構えて、王都キングダムウォールの城の窓を開け放つ。


「じゃあみんな少し行って来るね?」

「行くよ?勇者の剣」

《はい、我が主》


 俺は勇者の剣を持って王都キングダムウォールの城の窓から飛び出して、魔王の現れた場所へと向かうのだった。

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