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間話「創(はじまり)の予知と未来の勇者(キミ)へ」

 「…ん?またか…」


 私には悩み事がある。

 この私、アーサー・ペンラドゴンは勇者だ。この世界の神々や女神様からのお告げによって、勇者になって魔王を倒して世界を救うのだ。…と言われ勇者になった。

 それから数年間は地獄の鍛練をして己を鍛え上げて強くなり、心強く頼りになる仲間や人々に支えられて勇者となった。


 だが、私を待っていたのは悲しい現実だった。

 私が生まれ育った村は、片田舎の小さな集落、そこからの勇者の出を快く思わない者達が大勢居た。

 周辺諸国の王国貴族や王族からの妬みや嫌がらせ、私の村への圧力や差別。

 私が生まれる前からも、そういった嫌がらせや差別はあったが、元々の原因は魔王軍からの一方的な戦争行為。


 と、以前の俺なら信じていた――しかし実際は違った。

 魔王からの攻撃だと嘘を付いて、戦争を起こしたのは人間達の方だったのだ。

 魔王軍の幹部や四天王、更には魔王軍の兵隊や兵士、魔族の一般人達までもが挙って同じ事を言う。もちろん魔王自身も。


 ――人間達からの一方的な攻撃だと。


 事実を問い質すと、貴族や王族からは知らぬ存ぜぬ、だったが――次々に証拠や証言が出てくる。

 更には、獣人族や亜人種族に対しての奴隷扱い。

 加えて、私自身や勇者の仲間達を軍事的にも政治的にも王国は利用していた事実が発覚する。

 戦争を起こしたのを魔王軍とすれば、自分達の悪巧みも、魔王軍との戦争で有耶無耶にし――更には魔王を倒すという大義名分もあるから、人間達が正義になるという物であった。

 そんな人間達の醜い欲望を目の当たりにした私は、


「このような者達を守る為に、私は剣を力を振るって来たのか?」

「勇者様…」


 私の憤りを察した、王国の王女こと婚約者のライラ姫。

 彼女は、私の唯一の理解者であり、王国の他の貴族や王族と違って私を信じて付いて来てくれた女性だ。


 そんなある日から何故か不思議な現象が私に起こった。


 私には予知夢のビジョンドリームというスキルを所有しているが、ある日を境に――特定の人物の予知夢ばかりを見る様になった。

 見た事も聞いた事も無い建物や街中に彼は、一人で苦悩して生きていた。

 当然だが彼の事は、私自身を含めて仲間達やこの世界の者達も知らないのだ。魔王軍の者達も含めてな。


「だが、何故だ?――不思議と彼の事は他人の気がしないのだ」


 さて、話を戻そう。私の悩み事は二つある。

 一つは、魔王と人間との戦争が人間達の醜い手段によって引き起こされた事。

 もう一つは、誰かも分からない者の予知夢ことビジョンドリームの夢の事だ。

 

 魔王と人間との戦争については、私達の勇者の仲間達や獣人族や亜人種族達、人間で和平や勇者に協力してくれる人々とで、魔王自身と魔王軍との和平の話し合いを極秘に行っている。

 魔王と私は、同じ志を持つ友として和平の話し合いを続けた結果。

 魔王と人間との間に停戦協定が結ばれた。一時的な、あくまでも仮にだが。

 正式には、また後日改めてとなった。

 魔王軍や人間達や獣人族や亜人種族のの者達は、皆、歓喜した。やっと戦争が終わるのだと。


 一方で、例の予知夢ことビジョンドリームに出てくる人物については、


「結論から言えば、勇者様のビジョンドリームの人物の正体は――未来の勇者であると言っています」


 私は、知り合いの占い師に頼んで見て貰ったところ、予知夢ことビジョンドリームに頻繁に出てくる人物が、未来の勇者である事が判明した。

 私自身が一番驚いているが、まさか未来の勇者だとは。


「その未来の勇者は――今から一万年後の、この世界に勇者として現れると出ています」

「一万年後、長いな…」


 謎の未来の勇者については、よく分からないままだが、魔王と人間との戦争は停戦協定によって一旦は終結した。

 しかし、この話はここで終わらない。


 勇者と共に魔王と人間との戦争の和平の話し合いに参加した、人間達からの裏切り行為。

 更には、魔王軍側の強硬派による騙し討ち。

 私達の協力者達にも多くの犠牲者が出てしまった。

 勇者に協力した人間達に、王国の内通者が潜んで居た事もあったが。

 一番の裏切りは、私の婚約者の王女ライラ姫も実は彼らと最初から一味だったのだ。


「何故だ?――何故だライラ!」

「本当におバカさんの勇者様…私があなた達にいつ心を開きましたか?」


 その時、私の中にあった何かが――プツリと音を立てて切れる音がした。

 気が付くと私の周りには、血だらけで倒れる多くの人間達の亡骸と、動かなくなった王女ライラ姫が居たのだ。


「ライラ!…わ、私は――」


 そこに駆け付けた、私の仲間達はその惨状を見て――静かに全てを悟った。

 私を拘束して、私の片腕を斬り落としたのだ。


 ――当然か、私はどのような理由があれど、決して許されない罪を犯したのだ。


 死を覚悟した私だったが。

 直ぐに私の腕を回復魔法で即座に治療し、私と全く同じ体格の人間の死体をその場で大火力の火魔法で燃やし始めたのだ。

 訳が分からず、呆然と立っていると、


「勇者様、こうなる事は予期していました…なのでこの場で死んだ事にして、別の場所に逃げて下さい!」


 仲間達は、ライラ姫の裏切りも人間達が内通していた事も知っていたのだ。

 私に話すと、バレる可能性があった為話す時を見計らっていたという。

 しかし、私は拒否した、


「どのような理由があれど、私は人間達と自分の婚約者を手にかけたのだ…許されない事をしたのだ…っく!」


 罪悪感と自分自身が犯した罪に、涙を流しながら私は己の不甲斐なさを恨む。

 そんな私と仲間達とのやり取りの最中、彼らの後ろから、一人の女性が話し掛けて来た。


「勇者様…」

「は?ら、ライラ?」


 そこには自分自身で手にかけた筈のライラ姫が居たのだ。

 私は、そこに居る筈の無い愛する姫の姿に困惑している。

 これは幻覚かと、ライラ姫に近付き触れる。

 この美しく艶やかな銀色の髪、上品さの中に可愛らしさを持つ表情、青い瞳。


「ライラなのか?」

「私の顔をお忘れですか勇者様」

「ライラー」

「もう、勇者様ったら♡」


私は大泣きしながら、ライラ姫を抱き締めた。

 自分が殺めてしまったと思っていた、最愛の人が生きている。

 こんなに嬉しい事はない。

 私とライラ姫はしばらく抱き締め合って、


「ゴホンッ…後にしなさい…」


 仲間達からの話によれば、ライラ姫は幽閉されていたと知る。

 私が斬ってしまったあの者は、ライラ姫に瓜二つの双子のユイラだった。

 私は最初から、王国の貴族や王族に一網打尽にしようとされていた。

 仲間達は、妙に気前の良い貴族に疑いをかけて、隙を見て奴らを返り討ちにして来たのだと。

 私よりも優秀な仲間達に、少しだけ恥ずかしくなる。


「行きましょう勇者様?」

「え?何処へ」


 勇者とライラ姫は、仲間の一人に転移魔法で魔族こと魔王の居る、魔王城に飛ばすのだと。

 この事実は、魔王軍や魔王、魔族側も既に知っているのだと。

 後から、事が済み次第仲間達も魔王城に来るという。


 その後王国では、勇者による大量の人間達や王族と貴族達の殺害をしたとして、勇者の仲間達によって――その場で粛清された。

 と、大々的に噂が世界中に広まった。

 もちろん、表向きは勇者は死んだ事になっているが――魔王が居る魔王城に勇者とライラ姫と勇者の仲間達が仲良く暮らしている。


 魔王城に居た強硬派は、あっさり魔王の逆鱗に触れて瞬殺されたらしい。

 その後、私とライラ姫は、魔王城にて隠居して結婚した。


「私の妻になって欲しい」

「はい、勇者様…いえ、アーサー様」


子供にも恵まれて、幸せに暮らしている。

 本来ならここで話が終われば良いのだが、ここからが本番なのだ。

 以前は話した、例の予知夢ことビジョンドリームに頻繁に出てくる人物についてだが、今現在も頻繁に夢に出てくるのだ。

 最近だと、かなり鮮明に。

 更に、こちらの未来の世界で彼が再び苦悩するのは、見ていて心苦しいと思い。

 私は、魔王や仲間達に協力して――


「遠い未来の彼の者に出来る事を残そう…」

「良かろう」


 ――まずはそうだな、武器を残そう――いや、作ろうどんな相手にも負けない剣を。


 それを、私が死んだ後も――次の代の勇者に託して行くのだ。

 もちろん、手入れも欠かさずに、鍛冶職人や武器屋等を代を越えても尚欠かさずに。

 魔王や私自身と仲間達との絆と未来の彼の者やそれまでに繋ぐ次の世代に、何れ来る彼の者の為に。


 ――剣は二つか、二つ共、彼の者が使える様にしよう――魔王も承諾してくれた。


 あと、彼の者がこの世界に来た時に困らぬ様に、金銭面と――この世界での立回りもだな。

 特に私と同じ様な思いは二度とさせたくない。

 今は無理でも、私の子供や孫や曾孫の代にでも、国の法を勇者に対して――そう、自由にしてくれる様に託そう。


 ――勇者とは、自由な意思の下に剣や力を振るうのだと。


 彼の者が、別の道を選べる様にもしてくれる様にもして置こう。

 それから、彼の者がこの世界に来た時に、優秀な師も必要だな。

 剣術、武術、体術、魔法、冒険、この世界での常識や歴史もだな。


 あと、勇者の力や仲間達の力と、私達がこれまでに出会った者達や強敵の力を絆の力として、あの剣に付与しよう――もちろん、彼の者に必ず渡る様に、魔王にもかなり無茶を言ってしまったが――やってくれる様だ。


 ただし、彼の者を試す様にしよう――全ての力を手に入れるに相応しいか否かを。


 ――こんな感じだろうか?――彼の者にはもう。


「あなた…もういいのよ?――充分過ぎる程に世界は変わったわ…だから…」


 ――そうだな、私は少し疲れた、あとは子供達や次の世代に託そう。


 最後に、あの剣の名前を付けて置こう――名前は、ブレイブ…ブレイブジェネシスだ。


 ~勇者の剣ブレイブジェネシス~


 これは、後に一万年後に来るという勇者に手渡される伝説の最強剣と勇者の(はじまり)の物語。

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