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【第4部】第23話 現象の中心

ユウキの前方に、光が集まっていた。


巨大な魔力の塊が形成されていく。


熱。

圧力。

振動。


空気そのものが、歪んでいた。


カイムが低く言う。


「……極大級だ」


俺は動かない。

ただ、見ていた。



――やっぱりな……



魔力は、均一じゃない。


中心がある。

流れがある。

密度の偏りがある。



――現象には、構造が無いとおかしい。



カイムが横で叫ぶ。


「離れるぞ、イロハ!」


「先に離脱しろ」


「お前は!」


「観察する」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、

カイムが翼を広げ、上空へ退避した。


地上では、野次馬がざわめいている。


遠くで、スズの姿が見えた。


光が、さらに膨張する。


ユウキが叫ぶ。


「消えろ!!」


極大魔法が、解き放たれた――




落ちてくる。


巨大な熱塊。


俺は、動かない。



――中心は……そこだな。



衝突、直前。



――足裏魔法ダッシュ。



地面を蹴る。


爆発的な加速。


横へ。


衝撃波が背中を叩いた。


土が吹き飛び、砂煙が舞う。


着地。


振り返る。


地面はえぐれ、

巨大なクレーターが出来ていた。


野次馬の悲鳴。


ユウキの荒い呼吸。


俺はクレーターを見ながら言った。


「なるほど」


ユウキの顔が歪む。


「……何がだ」


「核がある」


「は?」


「外側は現象だ。中心が制御してる」


ユウキの目が怒りで赤くなる。


「だから何だ!!」


手を振る。

魔法陣が複数展開される。



――多重魔法か。



火球。


風刃。


雷撃。


初級から中級の魔法が、連続で飛ぶ。



――チッ、初級・中級は無詠唱か!



避ける。


最小動作。


足指の魔法射出数で微調整し、位置をずらす。


かする。


土が裂ける。


服が焼ける。


だが、当たらない。


ユウキの呼吸が乱れる。


「当たれよ!!」


さらに魔法が飛ぶ。


精度が落ちている。


焦っている。



――いい流れだ。



さらに避ける。


さらにかする。


さらに外れる。


ユウキの目が、完全に苛立ちへ変わった。


「くそっ!!」


手が大きく振られる。


見慣れた魔法陣が展開した。


魔力が膨張する。



――おいおい。


――その魔法陣は、俺の十八番だぞ?



バースト――


俺の相棒、爆発魔法。






来る。


避けられる。


だが――


俺は急カーブを描き、魔法の直線上へ走る。



――遠心性で反作用を軽減させれば!



走りながら撃てる。



――ファイアーボール!



爆発、直前。


火球を、バーストの中心へ投げ込む。


衝突。


次の瞬間――




ドンッ!!




爆発が膨れ上がる。


土煙。


衝撃。


視界が消える。


俺は、その場に膝をついた。


うずくまる。


動かない。



――これでいい。



極大魔法は、感情で撃つ。


確信した時、人は出力を上げる。






「——イロハ!!」


遠くで、スズの悲鳴が聞こえた。


周囲がざわめく。


「やったぞ……」


ユウキが息を荒げる。


「これで、終わりだ……!」


その目に、確信が宿る。


そして――


両手を掲げた。


先ほどよりも、

さらに巨大な魔法陣が展開された。


詠唱が始まる――






――よし!!



俺は、一瞬で立ち上がり、

足裏に魔力を発動させた。



――大丈夫だ。


――現象には、中心がある。


――中心があるなら……



足裏魔法ダッシュ――


そして、叫ぶ。


「カイム!!」


地面を蹴る。


爆発的加速。


まっすぐに突っ込む。


極大魔法へ――


その集まる光の中心――


『核』へ。






世界がスローになる。


核を中心に、光が集まっている。



――確か……タキサイキア現象って言ったか。


――このスロー現象、扁桃体の緊急参加だったな。



熱。


圧力。


振動。


しっかり、見える。


流れの歪み。


密度の偏り。


核の位置。


俺は左手を伸ばす。


触れる前から、

ゆっくりと皮膚が火傷の段階を上げていく。


掌に、魔力を集中する。


核の振動数を強制的に落とす。



――アイスショット。



そして、右手で放つ。



――バースト。



これが共振破壊……


いや――




「――核破壊だ」




次の瞬間——


光が、崩れた。


音もなく。


巨大な魔法が、


内側から、


崩壊した。

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