表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
91/108

【第4部】第15話 共振の代償

――テンプレなら……


一人で『俺TUEEE』的なやつ、か。

一人で勝って、称賛を浴びる場面だろう。


だが。


――このサイ相手に?


すてみ技を?

勝てても――続かない。


それは戦術じゃない。


――無理だろ。


上空、カイムの後ろ姿を見ながら、そんな事を考えていた。




森は、妙に静かだった。


足元には、

マジックバッグに未収納のシェルライノが一体。


少し離れた場所に、さらに二体。


「……六体」


数は足りている。


だが――


俺は右手を開いた。


指を曲げる。

違和感は消えている。


カイムの回復魔法は、確かに優秀だ。


それでも。


「……まだ、粗い」


俺は呟いた。




視線は、三体目の死骸に落ちる。


アイスショットで仕留めた個体。


あの瞬間、確かに感じた。


――振動。


内部から、何かが崩れる感覚。


偶然か。


現象か。


それとも――再現出来る技か。


俺は地面の感触を確かめた。


落ち葉が湿っている。


冷たい。


だが、考えるには丁度いい。






ゼロ距離バーストは、単純だ。


内部に爆発を発生させる。

だから硬殻でも意味がない。


だが、代償が大きすぎる。


焼ける。

折れる。

関節が壊れる。


「……効率が悪い」


だから、変えた。


アイスショット――


これも代償は大きいが……


凍結は、破壊ではない。


停止だ。


だが――




「あの震えは何だ?」




俺は掌を見つめる。


思い出す。


触れた瞬間。


氷が広がり――内部が、揃った。


そんな感覚があった。


「揃う?」


口に出してみる。


もし、内部構造が同一状態に固定されるなら……

そこに衝撃を入れたらどうなる。


「……共鳴」


いや。


「共振、か」


小さく息を吐く。


その言葉が、妙にしっくり来た。




俺は左手を前に出す。


魔力を集める。


初級魔法アイスショット――


俺の魔法は、加減が出来ない。


だから、

掌の前に現れた氷塊は、人の胴体ほどの大きさになった。


「……相変わらず、馬鹿でかいな」


俺は苦笑した。


氷塊を観察する。


透明な内部。


その中心で――


微細な粒子が、収束している。


「……?」


俺は一度、魔法を解除した。


氷塊が落ちるが無視し、

新たにアイスショットを発動させる。


発動と同時に、俺は目を細めた。


中心に集まる何か――


熱の芯のような――


流れの核のような――


「魔法にも、核があるのか……?」


もしそうなら。


――いつか、壊せる。


数秒見つめて、

俺は首を振った。


「……いや、今はいい」


氷塊を解除する。


地面に落ちた氷が、鈍い音を立てた。


今、必要なのは――


破壊の再現だ。




左手で凍結。


右手で爆発。


そして――


両方の反動を、足裏魔法ダッシュで殺し続ける。


頭の中で組み上げる。


成功すれば、装甲も防御も関係ない。


だが。


失敗すれば――




「腰が逝くな」




思わず笑った。


衝撃は、上下から同時に来る。

体幹で受け止めるしかない。


骨。


関節。


神経。


全部、潰れる。


「……まあ」


空を見上げる。




「守れるなら、安いか」




その瞬間、頭に浮かんだのは――


黒パン。


鉄板。


焼ける肉の匂い。


「……スズのハンバーガー」


腹が鳴った。


「帰らないとな」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




風が降りる。

カイムが戻って来た。


「待たせたな」


「遅い」


「無茶言うな。往復してるんだぞ」


カイムは新しいマジックバッグを放り投げた。


「軍のお古だ。

 使い込まれてるがAランク並みの容量が入る」


俺は頷いた。


立ち上がる。


「カイム」


「何だ」


「最後に検……

 マジックバッグ分を稼ぐぞ」


カイムの眉が動いた。


「検……って検証だろ?

 嫌な予感しかしないな」


「安心しろ。多分成功する」


「その『多分』が怖い」


俺は森の奥を見た。

地面が揺れる。


シェルライノ――


「……行くぞ」






距離を詰める。


足裏魔法ダッシュ――


視界が流れる。


相手が気付く。


だが問題ない。


左手を装甲に押し当てる。


「――ゼロ距離アイスショット」


氷が内部へ走る。


手応え。


揃う感覚。


コンマ数秒ずらし、右手で放つ。


「――バースト」


世界が、沈黙した。


衝撃が返る。


骨が軋む。


視界が白く染まる。


俺は足裏魔法を噴射し続ける。


反作用を消す。


消す。


消す。


それでも。


腰が悲鳴をあげた。


「……っ!」


次の瞬間——

シェルライノの装甲が、内側から崩壊した。


砕ける。


粉砕する。


肉も骨も外殻も――


完全に崩れ落ちた。




沈黙。




風だけが流れる。


カイムが、絶句していた。


「……おい」


俺は膝をついた。


ボロボロの両手では体を支えきれず、

そのまま顔面から地面に落ちた。


土の味がした。


顔だけを動かし、言った。


「……成功だが」


瓦礫を見て、苦笑する。


「素材が全部消えた」


「馬鹿かお前は」


カイムが額を押さえた。


「だから検証だと言った」


「検証とか……

 その姿勢で言われてもな」


カイムが回復魔法をかけ、俺はゆっくり立ち上がる。


腰が、鈍く軋む。


「……もう一体、狩るぞ」


「まだやるのか」


「普通にやる」


「その”普通”は”普通じゃない”のを忘れるな」




次のシェルライノは、一分もかからなかった。


足裏魔法ダッシュ――


接近。


右手を添える。


「――バースト」


装甲の内側で破裂音が鳴る。


魔物が崩れ落ちた。


俺は息を吐いた。


「……これで、ノルマ達成だ」


カイムが呆れた顔をする。


「最初からそれでやれ」


「それだと、分からない」


「何がだ」


俺は空を見上げた。




「限界が」




沈黙。




風が枝を揺らした。


カイムは小さく息を吐く。


「……歩けるか」


「歩ける」


一歩踏み出す。


腰を叩く。


それでも。


「帰るぞ」


「どこにだ」


俺は肩を回した。


「決まってる」


黒パン。


鉄板。


肉。


そして。


「飯だ」


――ちゃんと焼けるだろうか。


そんな事を考えながら、森を抜けた。


森を抜ける風が、少しだけ温かく感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ