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第8話 持たない、という選択

ベッドに仰向けになり、天井を見る。


木目。

節。

小さなヒビ。


――天井、低いな。


日本のビジネスホテルより、少し低い。

だが、不思議と圧迫感はない。


腹は満ちている。

身体も、問題ない。


だからこそ、思考が始まる。


「武器、か……」


今日、武具屋で見た剣の重心。

防具の硬さ。

金属の匂い。


悪くはなかった。

むしろ、品質はいい。

少なくとも、俺の目には。


だが――


――動きが制限される。


剣は、剣の動きしかできない。

槍は、槍の距離しか取れない。


熟練すれば話は別だ。

身体の一部のように扱えるなら、応用も利く。


――でも、それまでが長い。


今の俺には、時間はある。

だが、武器を使う理由がない。


だったら。


「……素手でいいか」


身体は、どんな動きにも対応できる。


殴る。

掴む。

投げる。

逃げる。


相手の構えを見る。

どこに張力がかかっているかを読む。


――膝が前に出た。

――足部が外を向いた。

――この靭帯、張ってるな。


例えば――腸脛靭帯。


そこを狙えば、戦意は簡単に折れる。


魔法使い相手でも同じだ。


詠唱中は、無防備。

放った直後は、体幹が崩れる。


――観察して、避けて、潰す。


結論は、もう出ている。


「武器はいらない」


ただし。


――俺、魔法使い…なんだよな。


どうにも実感がない。


それを置いても、魔法には問題がある。


身体的な反動。

心身への負荷。


今日見た魔法使いも、

放った瞬間、必死に踏ん張っていた。


――あれ、腰と膝、絶対やるな。


……となると。


「バンテージか……サポーターは欲しいな」


固定しすぎず、補助する。

動きを邪魔しない程度で。


筋力?


最悪、自重で十分だ。


スクワット。

片脚。

ジャンプ。


環境さえあれば、身体は維持できる。


問題は――生活だ。


「……町に住むか、旅に出るか」


金はある。

当分、困らない。


町に住めば、情報は集まる。

構造も見える。


人の流れ。

金の流れ。

力関係。


――見えすぎて、面倒だな。


旅に出れば、自由だ。

だが、荷物が問題になる。


ふと、思い出す。


――異世界ものって、だいたい……


「マジックバッグ、あるよな?」


ある前提で考えるのは危険だ。

だが、ないと困る。


もしあるなら――

多少高くても買う。


有金の大半を持っていかれても構わない。


自由には、それだけの価値がある。


「……明日、ギルドだな」


聞くことは決まった。


・マジックバッグの有無

・価格

・性能

・入手経路


方向性は、その後でいい。


今日は、もう考えない。


身体を横に向け、目を閉じる。


「……悪くないな」


異世界での生活は、

まだ、始まったばかりだ。



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