【第3部】第16話 真似の真似
山を下りると、町はもう見えていた。
俺は山と町の間、
開けた草原で足を止めた。
「ここで夜営をするぞ」
荷を下ろしながら、続けて言う。
「夜営の準備は任せる。
俺は街に行ってくる」
カイムはやれやれ、と
言わんばかりに肩をすくめた。
その様子を見てから、俺は町に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……予想はしていたが、高いな」
「そりゃ旦那、スパイスの類いは高級品ですからね」
――しかたないか。
「クローブとシナモンをその小瓶で。黒胡椒を中瓶で頼む」
「黒胡椒のミルはいかがします?」
「それも頼む。後、おろし金もあるか?」
「まいど!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ベリーの類いは売ってるか?」
「この時期だと乾物しか売ってないよ、お客さん」
「なら、それでいい。ベリーの乾物と干しブドウを頼む」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「エールの小樽と…ビネガーってあるか?
ワインでもリンゴでもあればいいのだが……」
「どっちも置いてるよ、
ワインビネガーは高級品だけど、どうする?」
「なら、リンゴでいい。小瓶で頼む」
「あいよ!」
俺は街のベンチで一息をつく。
――後は何が必要だ……
あ。
「……すり鉢、買い忘れた」
まあいい。
またあの店に寄ればいい。
さて。
――理屈では、これで作れるはずだが……
目的はハッキリしている。
『循環』
それだけだ。
そのための、検証だ。
――さて、どうなるか…
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺は買い物を終え、夜営に戻る。
「相変わらず、夜営の準備が上手いな」
「…慣れてるからな。
で、必要な物は買えたのか?」
「あぁ」
俺はマジックバッグから
購入した物を出す。
「……そろそろ何をするのか、教えろ」
「ソースを作る」
「ソース?
お前のカムリーヌ・ソースじゃダメなのか?」
「あれは超高級品だ。
それに、旨味もコクもない」
「じゃあ何のソースだ?」
「おたふくソースだ」
「おた……?なんだそれ?」
「正しくは……おたふくソース風もどき、だ」
「……真似の真似?」
俺はカイムにサムズアップし、
鍋に火をつけた。




