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【第3部】第13話 ここが、日常だ。

兄妹に案内されて、

路地裏の食堂に入った。


看板は古い。

壁も、床も、色が抜けている。


客は、ほとんどが子供だった。


騒がしくはない。

だが、静かでもない。


食器の音と、息を吸う音が混じっている。


俺は、一瞬で理解した。


――ここが、日常だ。




俺は兄妹に向かって聞いた。


「いつも、ここで食べているのか?」


「たまに…お金がある時だけ」


「そうか…なら、

 お前達がいつも食べているのを4つ頼もう」


「おじちゃん、ありがと」


「どういたしまして」


料理はすぐ運ばれてきた。

内容は黒パンと塩スープ。


スープの中には野菜がある…申し訳程度だが。


全体的に量は少ない。

温かいだけだ。


――兄は、十歳前後…妹は、六歳くらいか。


体格は、年齢より小さい。

栄養としては、明らかに足りていない。


カイムが、ぽつりと言った。


「……美味くは、ないな」


俺は否定しない。


「値段相応だ」


少し間を置いて。


「だが、こいつらにはご馳走だ」


兄妹は、無言で食べている。


早い。

必死だ。


俺は声をかけた。


「落ち着いて食え。誰も取らん」


兄が、短く答える。


「……はい」


妹も、小さく頷く。




食事が済んだ頃、兄が話し始めた。


孤児院にいること。

靴磨きと手伝いで、生きていること。


説明は、簡単だった。


「孤児院でも飯は出るんだろ?」


「出るけど…ここよりも少ない」


妹も言う。


「みんな、お腹すいてるもんね」


それだけだ。


同情を求める声ではない。

事実を述べているだけだった。


カイムは、言葉を失った。


何か言いかけて、

結局、黙ったままだった。


俺は、淡々と聞いた。


「見学できるか?」


兄妹は、顔を見合わせる。


「たぶん。院長先生に言えば…」


「……そうか」


一拍。


「おい、カイム。この後、行くぞ」


「……あぁ」


次に行く場所が、決まった。

それだけだった。


カイムは、横目にイロハを見て思う。


――こいつは、子供が好きなのか?


それとも、


――問題を見ると、

――通り過ぎられないだけ、かもな。


まぁ、


――俺の国でも、同じ問題はあるが。


朝の光は、路地に残っていた。



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