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【第3部】第14話 食べられれば、何でもいい

兄妹に案内され、路地裏のその奥へ入る。


建物は古い。

壁はひび割れ、窓も小さい。


孤児院――


最低限の設備。

雨風はしのげるが、それ以上ではない。


中から、院長が出てくる。

言葉遣いは丁寧だが、顔に疲れが滲んでいる。


”もしや!”と思ったのか、一瞬笑顔を見せる。


挨拶を交わし、

俺は見学を申し出た。


揉み手――


寄付を想像したんだろが、俺にその気はない。


だから、改めて伝える。


「今日は見学”だけ”だ」




中は、静かだった。


子供の多くは、朝から仕事に出ているという。

残っているのは、年齢の低い子や体の弱い子だ。


身なりは、路地で見た兄妹と変わらない。

服は古く、サイズも合っていない。


食事の内容を聞く。


黒パン。

薄いスープ。


量は少ない。


院長は説明した。


寄付と国からの最低限の支援――

これ以上は、難しい――


「……これが、限界です」


言い訳ではない。

現実だった。


俺は、否定しない。

説教もしない。


ただ、聞く。




帰り際、俺の視線は、子供達の足元に止まった。


靴の外側だけが、極端に削れている子。

土踏まずが潰れ、裸足のままの子もいる。


歩き方が、揃っていない。


――栄養不足、か。


ビタミン、カルシウム、タンパク質……


――……いや、


別の光景が、脳裏に浮かんだ。


路地裏の食堂。

兄妹が、無言で、必死に食べていた姿を。




俺は、ホールにいる子供達に声をかけた。


「なぁ、お前達」


子供達が、顔を上げる。


「飯の時間……楽しいか?」


戸惑いが広がる。


意味が、分からない。

そんな顔だ。


しばらくの沈黙の後、

誰かが言った。


「……食べられれば、何でもいい」


周囲の子供達も、黙っている。

その一言で、空気が固まった。


――食べるだけ、か…



---


俺は、イロハと子供達の様子を見て思う。


――これは、貧困の話じゃない

――こいつが見ているのは…


――もっと、別のものだ



---


孤児院を出る。


兄妹が、頭を下げる。


「ありがとうございました」


イロハは、軽く手を振るだけだった。


少し歩いたところで、イロハが立ち止まった。


「……カイム」


「なんだ」


「山芋を探すぞ」


「……相変わらず、意味が分からん」


イロハは、答えない。


ただ、前を向いて歩き出す。


多分だが…

俺の予想だが…


――遊びと、飯だ。



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