【第3部】第11話 妥当な対応
町に着いた。
町は騒がしかった。
人の数が多い。
声も、足音も、匂いも混ざっている。
俺は、流れに逆らわず歩いた。
角を一つ曲がり、
宿屋の看板を見つける。
中に入り、部屋を一つ取る。
鍵を受け取り、階段を上る。
特別なやり取りはない。
部屋に入ると、
カイムはマントを外さず、椅子に腰を下ろした。
「少し出てくる」
それだけ言って、俺はまた外に出る。
理由は言わない。
いつもの事だ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――どこのギルドも同じだな。
張り出されている、依頼書。
パーティー募集の、掲示板。
金属とインクの匂い。
「換金頼む」
カウンターに素材を出す。
ラーテル風の魔物。
硬い皮。
職員の視線が、そこで一瞬だけ止まった。
目線は素材から離れない。
「……これを、どうやって?」
「切った。それだけだ」
それ以上は言わない。
「少々お待ちを」
職員は裏の部屋に入る。
その間、俺は周りの冒険者を見渡した。
――人間ばっかりだな。
――エルフとかドワーフとかはいない世界なのか?
――魔族は……いる訳ないか。
やがて職員は1枚の紙を持って戻って来た。
「お待たせ致しました。
査定を行わせて頂きます」
査定。
換金。
処理は早い。
「それと、この魔物……ラバーハイドですが、
討伐対象の魔物となっております」
「……そうなのか」
「集団で襲い、皮が硬くて有名です」
「ギルド長に確認したところ、
集団殲滅能力を認めております」
「……」
「そのため、Cランクに昇格となります」
淡々とした声だった。
評価の理由には、興味がない。
ただ――
「……どうも」
それだけだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
宿屋に戻る。
入口の前が、
わずかにざわついている。
だが、足は止めない。
中に入る。
店主が、声をかけてきた。
言い淀みながら。
「……あの、お客さん……
お連れの方は……人間、ですよね?」
俺は少し考えてから答える。
「……いや? 魔族だが?
ここは、客を選ぶのか?」
空気が、固まる。
一拍。
店主はすぐに頭を下げた。
「い、いえ……失礼しました」
言葉を選びながら、続ける。
「今日は……泊まっていただいて構いません。
ただ、その……
他のお客様もいらっしゃいますので……」
言い切らない。
排除ではない。
だが、歓迎でもない。
俺は理解した。
――妥当だな。
「分かった。迷惑はかけない」
それだけ言って、ロビーを去る。
感情は動かない。
反論もしない。
廊下を歩く。
途中で、ふと立ち止まる。
誰も、悪くない。
だが、誰も踏み込まない。
それが、
”普通”として運用されている。
俺は扉を開けた。
部屋の中では、カイムがうたた寝をしている。
「……呑気なやつだ。」
この町、
――呑気なままじゃ、いかなそうだな。




