第4話 金は落ちていない。作るものだ
翌朝、空腹で目が覚めた。
胃が、はっきりと抗議している。
――ああ、昨日は何も食ってないんだった。
水はある。
火もある。
だが、食料がない。
異世界初日の成果としては、正直かなり地味だ。
「……魔王より先に、低血糖で倒れるな」
自分に言い聞かせながら、川辺へ向かう。
考えるべきは一つ。
金の問題だ。
『金運SS』
女神からもらった、唯一のチート。
だが――金は、ない。
「宝箱とか、金の延べ棒とか……
そういうのが落ちてたら楽なんだけどな」
当然、落ちていない。
現実でもそうだ。
金は拾うものじゃない。
仕組みを作って、取り出すものだ。
川の中を覗き込む。
透明な水。
細かい砂利。
その中に――
「……重そうな砂があるな」
言葉にした瞬間、
ひとつの単語が浮かんだ。
――砂金。
「とはいえ……ザルはない」
パンニングは無理。
だが、手段は一つじゃない。
「……熱分離、か」
砂金は重い。
そして、金属は熱に反応する。
全部まとめて溶かして、
急冷すればいい。
俺は川底の一角に狙いを定めた。
腰を落とす。
反動を受け止める姿勢を作る。
一瞬だけ、
ファイアーボールを撃つ。
――ドンッ。
砂と小石が一瞬で溶け、
すぐに川の水がそれを包み込む。
冷却。
沈殿。
……だが、形が崩れた。
――熱が足りない、のか?
「……熱を直接叩き込む……
……狙いをしっかり定めて……」
もう一度、同じ場所へ撃つ。
――ドンッ。
今度は、明確な塊が残った。
俺は水中の塊を拾い上げ、
近くの石で叩いた。
――キン。
鈍く、しかし確かな音。
中から、金色の粒が顔を出した。
「……あったな」
少し、安心した。
派手さはない。
だが、十分だ。
「ありがとうな、金運SS」
女神に向かって、
心の中で軽く礼を言っておく。
俺は同じ要領で砂金を集めた。
膝まで水に浸かりながら、黙々と。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――さて。
次は、町だ。
砂金は十分……だと思う。
いい加減、空腹が限界を叫んでいる。
川を辿る。
問題は――
下るか、登るか。
俺は川をのぞき込む。
魚が、少ない。
「……と、いうことは」
栄養が流れ込んでいない。
人の気配も、薄い。
なら答えは一つ。
「上流だな」
人は、水の上に集まる。
俺は川を遡ることにした。
途中、草むらが揺れる。
ホーンラビット。
二匹。
魔法は使わない。
殴る。
確保。
「……これも金になる、か?」
耳を掴みながら、
自分でも半信半疑で呟く。
しばらく歩くと、
道らしきものが見えた。
踏み固められた地面。
――人がいる。
その先に、
小さな町が見えた。
異世界二日目。
俺はようやく、
社会に辿り着いた。




