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第3話 うさぎは殴れても、火は調整できない

目を開けると、草原だった。


遮るものは何もない。

建物も、道も、看板もない。

風だけが、やたらと気持ちよく吹いている。


とりあえず、立ち上がる。


……で、最初にやったことは、

空を見上げることだった。


太陽は高い。


だが――

昇っているのか、降りているのかが分からない。


異世界あるあるだ。

時間の基準がない。


「町を探すか……?」


――いや……。


そう思って、すぐにやめた。


金運SSがあっても、

金は持っていない。


町に行っても、やることがない。

というか、何も出来ない。


なら優先順位は一つ。


――水だ。


俺は周囲を見渡し、

少し高くなっている丘を目指すことにした。


視界を取る。

基本中の基本だ。


歩き始めて数分。

草むらが揺れた。


――来たな。


飛び出してきたのは、

角の生えた兎だった。


――ホーンラビット……たぶん。


可愛いが、目は死んでいる。

完全に敵意。


「……魔法?」


一瞬、ファイアーボールが頭をよぎる。

だが次の瞬間、反作用の記憶が警告を鳴らす。


――やめとこう。

――所詮、兎だ。


飛び掛かってきた瞬間、

俺は一歩踏み込み、

普通に殴った。


鈍い音。

ホーンラビットは、そのまま動かなくなった。


「……うん」


魔法より安全。

そして確実。


俺は兎の両耳を掴み、

そのまま丘を登った。


丘の上から見えた景色は、悪くなかった。


森。

そして――川。


よし。

水場、確保。


丘を下り、川の近くまで移動する。

次の問題は、火だった。


「……ファイアーボールって、

 強弱のコントロールできるのか?」


女神はそんなこと、言っていなかった。


だが、やってみるしかない。


俺は森を背にし、

川側に枯れ草と小枝を集めた。


森林火災は洒落にならない。


腰を落とす。

下半身を安定させる。


「弱く……弱く……」


意識して、ファイアーボールを放つ。


――ドンッ。


反動は、相変わらず。


「……威力、変わってなくないか?」


だが、火はついた。

結果オーライ。


俺は一息ついてから、

ふと兎を見た。


「……で、

 どうやって解体する?」


詰んだ。


知識はある。

だが、道具がない。


ナイフもない。

包丁もない。


俺は兎を置き、川を見た。


「……魚にするか」


近くの岩を目掛けて、

ファイアーボールを定める。


岩を破壊しない様に、

十分に距離をとり――


射出。


撃つ。

撃つ。

撃つ。

……連射。


十分に熱くなったところで、

俺は助走をつけ――


全力のドロップキック。


岩は川へ――

ボチャン。


……。


何も浮いてこない。


ヒートショックと酸欠を狙ったが……

“熱”が足りないようだ。


「表面だけだったか……

 さすがに芯まで熱せられないか」


――熱が、水温の拡散に負けたな……。


俺はその場に座り込み、

空を見上げた。


今日の飯は、諦めよう。


異世界一日目。

成果は、水と火。


食事は、なし。


まだ、腰は無事だ。

反動の抑え方は分かった。


――重心、姿勢、ベクトルの向き……。


十分だ。

今日はそれでいい。


だが、


——このままだと、普通に飢えるな。



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