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【第3部】第2話 廃村で“何か”に出会った
道は、まだ続いていた。
気づけば、建物が並んでいた。
崩れた石壁。
歪んだ扉。
草に呑まれかけた通り。
――村……だったとこか。
新しくはない。
壊れてから、時間が経っている。
焦げた跡は薄れ、
踏み荒らされた土も、雨に均されていた。
人の気配は、ない。
俺は歩を進めた。
特に慎重になるでもなく、
急ぐでもなく。
家の中を覗き、
何もないことを確認し、
また次へ行く。
「……ここもか」
小さく呟く。
誰に向けたものでもない。
通りの奥。
半壊した家屋の陰で――
空気が、わずかに動いた。
止まる。
風ではない。
獣でもない。
――いる。
確信というほどではない。
ただ、そういう感覚があった。
「……誰かいるのか」
問いかけは、静かだった。
返事はない。
代わりに――
何かが、動く気配。
次の瞬間、
空気が押し返された。
バサッ――
重い音。
布ではない。
羽音に近い。
視界の端で、
人型の影が広がる。
――人、か?いや……違うな。
背中から、
羽根が伸びていた。
その羽根を大きく広げ、
重心を低くし、
両手を広げる。
――戦闘態勢か。
俺は……ただ見ていた。
威嚇されている、ということは分かった。
だが――
気づいてしまった。
体に刻まれた、無数の傷。
そして――
羽根の根元から、
赤いものが地面に落ちている。
一滴。
また、一滴。
血だった。
俺は、それを見ていた。




