表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界理学療法士 戦わずに勝つ“構造無双” 〜飯と制度で世界をひっくり返す〜  作者: ぺぇさん
【第二部】依存しない構造を作る~号令のいらない部隊~
42/63

【第2部】第21話 鉄と匂いと、満たされない腹

城下町は、

思っていたよりもずっと騒がしかった。


石畳を踏む音。

馬のいななき。

金属が擦れる乾いた響き。


――ああ、ちゃんと「生きてる町」だな。


城壁の内側。


軍の施設から数本通りを外れただけで、

空気は一気に変わる。


規律よりも生活。

命令よりも商売。

人の顔が、少しだけ柔らかい。


最初に目に入ったのは、武器屋だった。


――期待は出来ないが、バンテージ探してみるか。


剣、斧、槍。


どれも実用一点張りで、装飾は少ない。

この国の戦い方が、そのまま形になっている。


――やっぱり無いよな……ん?


視線が、自然と止まった。


「……あ」


ハルバード。


長い柄に、斧と突きの刃を併せ持つ武器。

後衛にも持たせる予定だった。


集団戦では理にかなっている。


個人的にも、

昔から、少しだけ憧れがあった。


だが――

手に取ろうとして、やめた。


今の俺が持つ理由は、ない。


武器は、使う”覚悟”があるかどうかだ。


店主が何か言いたそうにしていたが、

軽く会釈して店を出た。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



次に目に入るのは、屋台の列。


串焼き。

肉。

また串焼き。


味付けは、ほぼ全部……塩。


「……まあ、そうなるよな」


素材は悪くない。

焼き加減も悪くない。

でも、どれも似た味だ。


食い歩きをしながら、

自然と“評価”している自分に気づく。


――職業病だな、これは。


一軒、食堂にも入ってみた。


木の椅子。

大皿に盛られた煮込み。

腹は確かに、満たされる。


でも――


「あの老夫婦の店の方が美味かったな…」


ぽつりと、独り言が漏れる。


技術じゃない。

素材でもない。


たぶん、

“誰に食わせるか”を分かってるかどうか。


この国の食文化は、悪くない。

でも、尖ってもいない。


兵士向け。

労働者向け。

生きるための飯。


――ガッツリ、コッテリしたもんが食いたい。


その瞬間、脳裏に浮かんだ。


鉄板。

小麦。

刻んだ具材。

焼ける音。


「……お好み焼き、か」


思わず笑う。


小麦はある。

この国の“ソースっぽい何か”も、たぶん代用できる。


――マヨネーズ?


あれは嫌いだ。なくていい。


――配合?


知らん。

適当でいい。


失敗してもいい。

異文化なんだから。


「……作れるな、これ」


城下町の喧騒の中で、

誰にも聞かれていない思いつきが、生まれた。


俺は、まだ知らない。


この“腹が減った”という感覚が後に、


軍を――

国を――


静かに変えていくことを。


今はただ、

腹が減っているだけだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ