【第2部】第13話 回転
訓練場は、朝から騒がしかった。
号令。
足音。
金属音。
「――構え!」
兵たちが、一斉に片手剣を構える。
俺は、その外側で腕を組み、黙って見ていた。
――まずは、全体からだな。
踏み込み。
斬り下ろし。
受け。
返し。
そして、合間合間に素振りを入れる。
動きは揃っている。
素人目から見ても、
よく訓練されている。
だが――
「……素振りか……」
思わず、口から漏れた。
横にいた部隊長が、ちらりと見る。
「どうした?」
「……素振りは、練習の一環か?」
「そうだが……変か?」
「もしかして……以前はロングソードだったか?」
「よく分かったな。
俺が訓練兵の頃はロングソードだった。
正規兵になった頃だったか……
その頃には片手剣に統一された」
「訓練内容も変わらず、か?」
「あぁ。あの頃と変わっていない」
――なるほど。
違和感は、まだあった。
兵たちは、剣を“振って”いる。
振っている、というより――
“振らされている”
腕で。
肩で。
力で。
剣そのものに。
以前組んだCランクパーティーの剣士が言っていた。
『力がないと触れないだろ?』
この訓練を見ると、理解できる。
俺は一つ、深く息を吐いた。
「なぁ、部隊長……」
「ん?どうした?」
「後で、俺に片手剣の使い方を教えてくれ」
「ほぉ……剣士でも目指すか?」
「知らないまま口出しするのは、論外だ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
訓練後——
部隊長と、二人。
グリップの握り方。
剣筋の意図。
足さばき。
攻めの型。
防御の型。
一通りを聞き終え、
俺は汗を拭いながら言った。
「つまり、剣の重心の使い方だな」
「そういう事だ」
片手剣の重心は、鍔に近い。
日本刀の様に、
“振り下ろす”を主にしない。
むしろ――
「円、か」
鍔に近い重心をコントロールする。
流れるように――
止めずに――
永遠に近い、無限の円——
力はいらない。
剣の重心を利用して、
流れるように――
「……回転させる」
――まるで、踊りだな。
そして。
この踊りを急停止させると――
「……んぐっ!」
手首。
肘。
肩。
遠心力が、過負荷になる。
――止める時は、動きを小さくしながら、か。
俺は、小さく呟く。
「……ジャイロキネシス」
「ん?何か言ったか?」
「いや……」
俺は剣を下ろし、部隊長を見る。
「なぁ、部隊長殿」
「なんだ改まって?」
「素振りは禁止だ」
「は!?」




