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異世界理学療法士 戦わずに勝つ“構造無双” 〜飯と制度で世界をひっくり返す〜  作者: ぺぇさん
【第二部】依存しない構造を作る~号令のいらない部隊~
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【第2部】第11話 模擬

鍛錬場は、静まり返っていた。


石畳。

囲む兵。

中央に、二人。


副官は剣を抜き、自然体で立つ。


対する俺は――


「……裸足でいいか?」


副官が、眉をひそめた。


「は?」


「靴、脱がせてもらう」


「ふざけているのか?」


「いや、真面目だ」


それ以上、説明はしない。


理由を言っても、理解されない。

なら、言う必要もない。


部隊長が一歩前に出た。


「許可する」


副官が驚いた顔で振り返る。


「隊長!?」


「これは“模擬戦”だ。裸足でも良かろう」


短く言い切る。


副官は舌打ちしつつ、剣を構え直した。


「……後悔するなよ」


――しない。


俺は、ゆっくり靴を脱ぎ、石畳に足を下ろした。


冷たい。

硬い。


感覚の情報量が、多い。


「……よし」


足底感覚って大事だ。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



開始の合図は、無かった。


副官が、間合いを詰める。


速い。

実戦慣れしている。


――まずは、最小。


右足、親指。


小さなファイアーボールが射出された感覚。


「……っお!」


体が、数センチ浮いた。


跳んだ、というほどじゃない。

ただ、重さが抜けた。


副官の剣が、わずかに空を切る。


「……?」


副官の動きが止まる。


――成功。


反作用は、小さい。

制御も効く。


「もう一つ」


左足、親指を追加。


今度は、横。


滑るように、位置がずれる。


副官の踏み込みが、半拍遅れる。


「な……!?」


攻撃はしない。


まだ、だ。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



右足、人差し指を追加。


出力、三割。


浮かない。

跳ねない。


ただ、踏み直しが異様に速い。


副官が距離を詰める。

俺は、半歩だけ外に出る。


「ちっ……!」


剣が届かない。


近いのに。

届くはずなのに。


副官の呼吸が、乱れ始める。


「どうなっている……!」


見えてない――


それでいい。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



左足、人差し指を追加。


四割。


今度は、後ろ。


距離を取る。

取りすぎない。


追わせる。


副官が前に出た瞬間――


――止まれるか……?


足指のファイアーボールは初速だけ。

今は、慣性で動いている。


足を、地面に叩きつけてブレーキ。


――裸足、痛っ!!!


副官は急停止した俺に反応しようと、

踏み込み過多で体勢を崩した。


「――っ!」


剣先が下がる。


俺は、そこに居ない。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



攻撃は、一度もしていない。


殴っていない。

蹴っていない。

魔法も攻撃に使っていない。


なのに。


副官は、息が荒い。


「……ふざけるな……!」


――理解できないものほど、人は怒る。


怒り。

焦り。

混乱。


全部、判断を鈍らせる。


――十分だ。


「そこまで!」


部隊長の声が、場を切った。


副官が、動きを止める。


剣を下ろし、俺を見る。


「……なんだ、その変な加速は!!?」


俺は、足元を見た。


石畳。

裸足。

十本の指。


「……調整した、結果だ」


「何をだ!」


「位置と、距離と、出力」


それだけ言う。


副官は、理解できない顔をしていた。


部隊長は――

黙って、見ている。


目を逸らさず、最後まで。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



――うん。閉所でも、動けるな。


俺は、ゆっくり靴を履いた。


――足裏魔法ダッシュ。


いや。


「……足指、か」


名前なんて、どうでもいい。


使える。

再現できる。

生き残れる。


それで、十分だ。


模擬戦は、終わった。


……そういえば。


――これ、多重詠唱か!?


結果良ければ、なんとやら。


使えるものは使う。


それだけだ。



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