【第2部】第10話 釈放
城内の一角。
鉄格子の前に、
見覚えのある影が立った。
「――拘束は、ここまでだ」
部隊長だった。
鍵の音。
金属が外れる、乾いた音。
「上からの指示だ。釈放する」
「……早いな」
「自由という意味ではない」
部隊長は、淡々と続ける。
「しばらくは、城下での行動に限る。
移動は記録される。接触も、だ」
「監視付き、か」
「そうだ」
否定も、言い訳もない。
「だが――」
部隊長は、一瞬だけ言葉を切った。
「村での判断。戦闘後の行動。
総合して、“敵性は低い”と判断された」
「評価、どうも」
皮肉でも、感謝でもない声。
部隊長は気にせず、続けた。
「話を聞きたい。
流れ者として、何を考えているのか」
「……」
俺が口を開こうとした、その時だった。
「――隊長!」
横から、張りのある声が割り込む。
副官だった。
「リーフ殿!
報告書を拝見しました!」
一歩、前に出る。
「詠唱なしの魔法運用。
距離管理。地形判断。
……正直、興味があります」
目が、まっすぐ俺を見る。
「是非、一度。
手合わせを願いたい」
一瞬、空気が止まる。
俺は、即答した。
「いや、遠慮する」
副官の目が見開かれる。
「なっ……!?」
「やる理由がない」
それだけだ。
副官の顔に、熱が上がる。
「手合わせを拒否するとは……
それでも男か!?」
……面倒だな。
俺は、視線だけを部隊長に向けた。
――助けろ。
その意図を、部隊長は正確に読み取った。
一拍。
そして――
「……すまんが、リーフ」
低く、頭を下げる。
「頼む」
副官が、息を呑む。
「隊長……?」
「……俺の判断だ」
部隊長は、俺を見る。
「お前が危険かどうかを測るには、
これが一番早い」
副官は、うろたえている。
――優しい部隊長様だな。
「……」
少し考える。
逃げる理由は、ない。
断る理由も――もう、薄い。
「分かった」
短く答えた。
「ただし、条件がある」
副官が、身を乗り出す。
「条件とは!?」
「死なないこと」
「!?
……貴殿は、私を甘く見ているのか!!」
「いや。俺が、だ」
静かな声。
部隊長が、頷く。
「……ついて来い」
――面倒だが。
「……まぁ、いい」
俺は、小さく息を吐いた。
考えたことを、
試す機会ではある。
そう思いながら、歩き出す。




