【第2部】第2話 型を探す
気の向くままに、歩く。
道と呼ぶには心許ない獣道を抜け、
森を抜け、草原に出る。
風が強い。空が広い。
しばらく進むと、
立札が一本、地面に刺さっていた。
板は古く、文字らしきものは彫られているが――
「……読めん」
だが、その下に矢印が描かれていた。
方向は一つ。
――まぁ、看板みたいなもんだろ。
文字が読めなければ、勘を使えばいい。
人に会えば、聞けばいい。
それに――
「……余計な情報が入らないのも、悪くないな」
目的地も、最短ルートも分からない。
だが、その分、思考は静かだった。
矢印の示す方へ、足を進める。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
最初の魔物に出会ったのは、それからすぐだった。
小型。単体。
脅威度は低い。
「……よし」
詠唱はしない。
というか、知らん。
この世界に来た時から無詠唱だ。
足裏に意識を集める。
――魔法を推進力に……
「ファイアーボール」
ダッシュ――
一気に間合いを詰め、右ストレート。
鈍い音。
魔物はそのまま倒れた。
「……」
悪くない。
いや、効率がいい。
少し進んで、また魔物。
今度は――
足裏魔法ダッシュから、アッパー。
顎を打ち抜き、体勢を崩す。
追撃は不要。
「うん」
さらに次。
中段蹴り――
「ぬぉッ!!??」
軸足のバランスが崩れる。
だが、慣性は止まらない。
バランスを崩したまま、魔物に激突。
魔物は派手に転ぶ。
俺はすぐ起き上がり、
足裏魔法ダッシュで即距離を取る。
そして。
魔物が起き上がったタイミングで、
足裏魔法ダッシュを発動。
急接近し、殴る。
――やっぱり、これだな。
魔法を攻撃に使うより、
移動に使った方が圧倒的に再現性が高い。
――中段蹴りは要練習だな。
そこからは、実験になった。
足裏魔法ダッシュ。
角度を変える。
距離を測る。
踏み込みを調整する。
そして――
足裏魔法ダッシュからの、前蹴り。
「……お!」
魔物が、文字通り吹き飛んだ。
距離が一気に空く。
「これは……いいな」
距離を稼げる。
安全圏が作れる。
そして、そのまま――
ワインドアップ。
投球動作。
「ファイアーボール」
一直線の魔力弾。
ドンッ――!
「うん。これだ」
近接は物理。
距離が取れたら、投球。
分かりやすい。
無駄がない。
身体も、壊れにくい。
ロマンは、嫌いだ。
派手で、非効率だから。
でも――
浪漫は、嫌いじゃない。
人が、ちゃんと生き残れる戦い方。
「次に使える魔法を覚えるまでは……」
一人、呟く。
「これで行こう」
空を見上げる。
雲が、ゆっくり流れていた。
文字も読めない。
地図もない。
使命も、目的もない。
でも――
足は、自然と前に出ていた。
異世界は、まだ広い。




