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第19話 誘導

崩れた小屋の奥から、

ゆっくりと影が立ち上がる。


――でかいな……


山賊たちが、無意識に道を開けた。


――親分、か?


「貴様等、覚悟は出来てるんだろぉな?」


親分が斧を肩に担ぎ、2人と対峙する。


剣士は構え直す。

斥候が一歩、前に出ようとする。


――違うだろっ!


俺は声を張る。


「待て!」


「ん!?」


短く止める。


「前に出るな」


斥候が足を止めた。

親分の視線が、こちらを一瞬だけ掠める。


――聞いてるな。


それでいい。


「二人でやれ」


剣士と斥候を見る。


「同じ距離、保て」


「……」


剣士が頷く。

斥候も位置を合わせる。


前後にズレない。

横並び。


親分が動く。

様子見の踏み込み。


間合いを測っている。


俺は声を張る。


「剣士!お前は隙を見ろ!

 ……斥候!」


「?」


「何でもいい!物、投げろ!」


「は?」


一瞬の間。


だが斥候は視線は変えずに、

足元の小石を取り、投げた。


当たらない。


木材を投げる。


腕に当たる。

親分は、気にしない。


だが親分の視線が動く。


――そうだ。それでいい。

――概念を固定しろ。


斥候=撹乱

剣士=本命


剣士も、それを理解したのか、

構えを深くした。


親分の重心が、剣士へ寄る。


斥候は物を投げ続ける。


――行け。


剣士が踏み込む。

親分が受ける。


斧と剣がぶつかり、

鍔迫り合いになる。


力と力が噛み合う。


視線が固定される。


体重が前に乗る。


そして――


脇が――空く。


「斥候」


短く。


「行け」


その一言で、斥候が消えた。


次の瞬間、

脇腹に刃が入る。


「ッ――!」


親分の体が揺れる。

剣士が押し切る。


均衡が崩れ、

巨体が地面に叩きつけられた。


そして――


「ファイアーボール」


俺はファイアーボールを乱射する。

当たる、当たらないは関係ない。


残った賊の退路を防ぐ。


”逃げても狙撃される”


その環境を作る。

そして、戦意を消さないために。


「おい!!他を殲滅するぞ!」


「おう!」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



山賊たちは、程なく制圧された。

森に、静けさが戻る。


「……助かった」


剣士が、肩で息をしながら言う。

斥候が、苦笑する。


「撹乱どころか、アジト消し飛ばすとはな……」


斥候が続ける。


「……にしても、あの指示良かったぞ」


「どうも」


親分を見下ろす。


「……ただの”思い込み”だ」


「は?」


「役割を決めると、人はそれ通りに動く」


「……俺が決める役だと思っていたが?」


剣士が言う。

斥候が小さく笑う。


「そう思ってた。俺は撹乱担当ってな。

 で……最終的に俺がとどめを刺した。

 結局、俺の役割は何だったんだよ?」


「適当」


「ひでぇ」


剣士が苦笑する。

ヒーラーがその場にへたり込んだ。


「よ、よかった……」


その様子を一瞥して、

軽く息を吐く。


「二対一なら、普通にやれば勝てる」


視線だけを二人に向ける。


「普通にやらなければ、簡単になる」


「……お前なぁ」


ヒーラーが、じっと俺を見る。


「あなた……本当に、Eランク?」


俺は、肩をすくめた。


「正真正銘のEランクだ」


誰も、すぐには返事をしなかった。


――勝負を時の運に任せる様な、ロマンは嫌いだ。


だが。


――再現性がある”浪漫”は、たまに、想定を壊す。


そして俺は、

剣士の背中を見ながら思う。


――久しぶりに、ウズウズしてきた。


言いたい。

体を……”肘”を触りたい。


でも――

まだ、黙っているべきか。


異世界生活は、

静かに、次の段階へ進もうとしていた。




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