【第6部】第13話 静かな再訪
カイムが、荷を担ぎ直した。
「後のことは任せろ」
「ああ」
俺は短く答える。
「回復役がいないんだ、無茶はするなよ」
「分かってる」
ザッツが肩を鳴らした。
「ガキどもは任せとけ。
変な奴には指一本触れさせねぇ」
「頼む」
一拍置いて、俺は続けた。
「……スズだが」
カイムが視線を上げる。
「不安になる時がある。
その時は、仕事を振れ」
ザッツが鼻で笑う。
「酷ぇな」
「放っておく方が酷い」
俺は淡々と返す。
「体調を崩さない程度にな」
「分かってる。気を紛らわせるんだろ?
あと、酒造りも指示通りやっておく」
「ああ」
短い沈黙。
俺は踵を返した。
「行ってくる」
背に、声が飛ぶ。
「気ぃ付けろよ」
振り返らない。
手を軽く上げただけで、歩き出した。
――静かだな……。
風の音だけが耳に残る。
一人で歩くのは、久しぶりだ。
足音が、やけに軽い。
こういう時は、思考が回る
アイスミスト――
予想通りだった。
0か100の出力、
あいつらの話なら、少し冷える程度。
でも100の出力なら――
氷点下まで下がる可能性があった。
――ん?
氷点下まで下がらなかったら……
「……丸焦げだったな」
思わず苦笑をする。
――試し打ちは必須だな。
「……まぁいい」
呟きは風に消える。
ドラゴンを倒した後、
いくつか、魔法を覚えた。
なんかの障壁系――?
エアカノンは、空気砲か――?
他にも何個か増えた。
小さく息を吐く。
「後で試すか」
それにしても、
回復系は、ひとつも出ない。
「適性、か」
呟いて、首を振る。
無いものを数えても意味はない。
いや、そもそも――
俺が回復魔法を覚えてはいけない気がする。
回復魔法は言わば細胞の強制増幅だ。
適正範囲なら傷も骨も治る。
だが、
出力100で細胞を強制増幅させたら――
「……回復は危険だな。
俺の出力だと、治す前に壊す」
少し伸びをする。
「得意な奴に任せるに限るな」
歩幅は変えず、
思考を膨らまし、
ただただ、歩く。
視線の先に、影が浮かんだ。
細く、縦に伸びた輪郭。
監視塔だ。
距離は、まだある。
「さて」
小さく息を吐く。
「飯は、美味くなってるかな」
風が、少しだけ温かった。
「――あの時よりも」




