【第6部】第11話 竜の構造
焼けた地面。
黒く焦げた骨。
空気が、重い。
巨大な影が、ゆっくりと動く。
誰も動かない。
その中で――
俺は口を開いた。
「……そもそもだな」
視線は外さない。
「なんでこんなデカいもんがいる?」
「……は?」
「生態系どうなってる?」
「今それかよ!?」
俺は続ける。
「で、ドラゴンのブレスって」
一拍
「魔法か?
それとも、生理現象か?」
「は?」
カイムが低く答える。
「……炎を吐く器官があると聞いた」
俺は目を細める。
「器官……喉か」
「おそらくな」
「なら、問題ない」
一拍。
「壊せる」
「いやいやいや!?」
「二人とも、ちょっと待ってろ」
「おい!一人でやるのか!?」
「安心しろ。ただの検証だ」
「お前の検証は、怖いんだよ……」
カイムは小さくため息を吐いた。
「回復魔法の準備はしておく」
「いや!?止めるとこだろ!!」
「……ああいう人種だ、と思うことにした」
俺はゆっくりドラゴンに近づく。
炎を吐く器官が喉にあるのなら……
――何で着火している?
魔法?
口に着火装置か?
どちらにしろ――
ブレス前に口を空けないと、
内圧で肺が破裂するはずだ。
後は――
ブレス中の口の動きで、
魔法か生理現象かが、判別出来るな。
――まずはそこからだ。
俺はドラゴンの正面に立った。
赤い瞳が俺を捉える。
――まずは、挑発がてら……
俺は助走をつけ、空へ跳ぶ。
体を反らし――
打点は高く――
バレーボールのアタック動作。
――火には水。基本の考えだが……
「ウォーターボール」
バシャ――!
「……」
ドラゴンは、
当たった場所を気にも止めていない。
――ドラゴンの前じゃただの水鉄砲か。
「ブレスを吐かせないと、検証になんないだろ」
俺はウィンドカッターを放ってみた。
『グゥギャ?』
反応あり――
当たった場所に、微かなかすり傷。
――十分だ!
俺はウィンドカッターを連射した。
射出。
射出。
射出。
射出。
射出。
そして――
『ギャオーー!!!』
明らかな威嚇。
その瞬間――
ドラゴンの胸が膨らむ。
大きく。
ゆっくりと。
――吸気が長い。
「……来るな」
ドラゴンが口を開く。
熱が漏れる。
空気が歪む。
次の瞬間――
炎。
轟音。
視界が白に染まる。
――足裏魔法ダッシュ!
爆発的な加速。
紙一重で回避する。
熱が背中を舐める。
皮膚が焼ける一歩手前。
着地。
転がる。
立つ。
視線は、口。
「……開きっぱなし、だな」
――排気か、排熱かは知らんが……
俺は小さく笑った
「物理現象で確定だな」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その頃、カイムとザッツ――
「なぁ……カイムさんや」
「……言いたい事は分かる」
「ドラゴン相手に、笑ってるんだが」
「……だから、
そういう人種だと、お前も思え」
「俺、あんなヤバい奴に再戦挑んだのか?」
「……そうだ」
「マジか……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そして、
俺は挑発を繰り返す――
――ブレスがお前の得意技だろ?
足裏魔法ダッシュで接近し、
適当な魔法を放ち、
足裏魔法ダッシュで離脱。
――なら、イライラしたらどうする?
足裏魔法ダッシュで接近。
尾が振られる。
足裏魔法ダッシュで回避。
――攻撃を全部回避されたらどうする?
足裏魔法ダッシュで接近。
爪が襲う。
足裏魔法ダッシュで回避。
バーストを置き土産に放つ。
そして、ふと思った。
――この世界でも、
――燃えたら二酸化炭素か?
――なら、“燃焼後”の空気を固定できるはずだ。
「……検証開始だ」
ドラゴンの口が開く。
胸が膨らむ。
俺は足を止め、ブレスを待つ。
狙いが俺に定まり、
ブレスが放たれる。
――足”指”魔法ダッシュ
足指の本数分、
足裏魔法ダッシュの威力を調整。
炎がかするギリギリの距離。
俺は手をかざし、魔力を空気中に流す。
――相転移だ!
そして、一気に離脱。
離れた距離で、元いた場所を見る。
そこには、魔石が転がっていた。
俺は足裏魔法ダッシュで
魔石に急接近し、回収。
近くの燃えている地面に石を叩きつけた。
すると、火が消えた。
――二酸化炭素、確定だな。
思いつきとは言え、
二酸化炭素の相転移も成功か。
さて。
そろそろ――
「狩るか」
ブレスの間合い――
吸気の隙――
喉の構造――
――条件は揃った。
俺は、足裏に魔力を込めなおした。




