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【第6部】第8話 資金調達

個室の空気は、静かに落ち着いていた。


侍従長がカップを置く。


「ところで」


視線がこちらに向く。


「雇用として人を抱え」


少し間を置く。


「さらに酒産業を立ち上げるとなると」


指を組む。


「それなりの資金が必要になりますが」



沈黙。



「どの様にお考えで?」


俺は少し考えた。


「……?」


カイムが横で言った。


「ノープランか」


俺は言った。


「金運SSがある」



沈黙。



「何とかなるだろ」


その時、

侍従長の目が見開かれた。


しばらくの沈黙の後、

やがて、静かに語り始めた。


「イロハ殿……金運SSは、

 ただの金儲けの能力ではありません」


「――!やはりそうか!!」


カイムが頷く。


「ん?そうなのか?」


「えぇ。金運SSは”経済を回す”能力です」


「経済……」


「はい。人・物・金の流れを、

 自然と生み出す力、とでも申しましょうか。

 財務関連の人達が、

 喉が出るほど欲しい能力です」


「なら、俺の再就職先は安定だな」


侍従長は少し笑う。


「あなたらしい。ですが、

 余り大きな声で言わない事をお勧めします」


「忠告、感謝する」


侍従長は1つ咳払いをして、話題を戻す。


「……一つ」


ゆっくり口を開く。


「金策に、うってつけの方法があります」


「なんだ?」


侍従長は言った。


「ドラゴンです」



沈黙。



カイムが眉をひそめる。


「……は?」


俺は少し首を傾げる。


「いるのか?」


侍従長は頷いた。


「えぇ」


静かな声。


「現在、閣下が頭を抱えております」


カイムが腕を組む。


「理由は?」


侍従長は答える。


「本来、ドラゴン討伐は軍の任務です」


一拍。


「ですが、現在は戦時中。

 軍を大きく動かせない状況にあります」



沈黙。



カイムが小さく頷く。


「なるほどな……」


少し考える。


「戦線を維持しながら、ドラゴン討伐は無理か」


侍従長は続ける。


「しかし放置も出来ません。

 被害が拡大します」


俺は言った。


「それで?」


侍従長は静かに頷く。


「ドラゴンの素材は非常に高価です」


指を折る。


「鱗、牙、骨、血……どれも一級品」


さらに続ける。


「加えて討伐報酬」


視線をこちらに向ける。


「イロハ殿が対応して頂ければ」


少しだけ間を置く。


「閣下も報酬の上乗せを検討されるでしょう」



沈黙。



カイムが低く言う。


「……ドラゴンか」


少し笑う。


「随分とでかい話だな」


侍従長は頷いた。


「えぇ。ただし――」


声が少しだけ低くなる。


「――非常に危険です」



沈黙。



「一つの案として、ご検討ください」


部屋が静かになる。


俺はカイムを見た。


「カイム」


カイムは嫌な顔をした。


「……まさか」


俺は言った。


「一狩り行くぞ」




沈黙。


カイムはしばらく黙っていた。




やがて深く息を吐く。


「……はぁ」


頭をかく。


「本当に行くのか」


俺は言った。


「金がいる」


カイムは苦笑した。


「理由が雑すぎる」


侍従長が小さく笑った。


「決まりですね」


カイムが立ち上がる。


「装備はどうする」


俺は言った。


「俺は装備なんか、したことがない」


カイムが顔をしかめる。


「いや、そうだが……

 さすがに相手がドラゴンだぞ?」


俺は肩をすくめた。


「まずは実物を見る。

 手を出す。

 ダメなら装備を考える」


カイムはため息をついた。


「はぁー……

 また共振破壊か?無茶するなよ」


侍従長が静かに言う。


「共振破壊、

 というものには興味がありますが……」


咳払い。


「では、場所は後ほどお伝えします。

 準備が整い次第、ご連絡下さい。

 その時に正式に依頼として発行しましょう」


俺は頷いた。


カイムがぼそりと言う。


「勇者はどうする?」


「ドラゴン討伐から戻ってくる頃には、

 話はついてるだろ?」


俺は侍従長を見る。


「その様に進めさせて頂きます」


俺は立ち上がった。


「資金調達だ」


灯りが揺れる。


「ドラゴンに、ちょっと試したい事がある」

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