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【第6部】第6話 勇者の処遇

沈黙が続いていた――


ユウキはしばらく俯いたまま、動かなかった。


やがて、小さく言った。


「……その仕事」


顔を上げる。


「俺でも出来る、のか?」


俺は答えた。


「出来る」


少し間を置く。


「むしろ、お前向きだ」


ユウキは苦く笑った。


「勇者失格なのに?」


俺は肩をすくめた。


「もう一度言う。

 勇者は仕事じゃない」



沈黙。



「だが」


少しだけ口元を緩める。


「仕事はある」


ユウキはしばらく俺を見ていた。

迷っている顔だった。


拳がゆっくり握られる。


そして、ぽつりと言った。


「……やる」



沈黙。



「もう一回」


喉が鳴る。


「やり直したい」


俺は頷いた。


「いいだろう」


侍従長が静かに口を開く。


「問題があります」


俺を見る。


「彼は現在、囚人です」


俺は頷く。


「そうだな」


侍従長が続ける。


「魔王陛下への宣戦布告」


指を折る。


「領内不法侵入」


もう一本。


「武力行使」



沈黙。



「本来であれば、死罪に相当します」


ユウキの肩がわずかに揺れた。


俺は言う。


「普通ならな」


侍従長は俺を見る。


「……違うと?」


俺は言った。


「まず整理しよう」


石の床を指で叩く。


「魔王に被害はない」


侍従長が頷く。


「ありません」


「魔族側の死傷者は?」


「ゼロです」


俺は続ける。


「実際に戦ったのは?」


侍従長は答える。


「イロハ殿、です」



沈黙。



ユウキが小さく言う。


「……人間同士」


俺は頷いた。


「そうだ」


侍従長が少し考える。


「つまり……

 被害者はあなた」


俺は言った。


「そうなる」



沈黙。



侍従長が静かに言う。


「ならば……」


少し目を細める。


「訴えがなければ――」


俺は続く言葉を言った。


「あぁ。

 俺が訴えなければ、事件は成立しない」


ユウキが顔を上げる。


「……え?」


侍従長が続ける。


「しかし――」


指を組む。


「それでは体裁が悪い」


俺は頷いた。


「当然だ。

 勇者が城で暴れました――」


侍従長は言う。


「――そして無罪」


首を振る。


「それでは政治が持ちません」


「そのための、社会奉仕だ」


侍従長が眉を動かす。


「……ほう」


俺は続けた。


「罪は認める。

 ただし、社会への労役で償う」


侍従長が静かに頷く。


「前例はあります」


少し考える。


「魔王陛下も許容するでしょう」


ユウキがぽつりと言う。


「……労役って」


俺は言った。


「だから、働けって事だ」


一拍。


「飯はタダじゃない」


ユウキが苦笑する。


「牢屋よりマシか」


侍従長が言う。


「なるほど。

 だから雇用先はイロハ殿の所、

 という訳ですな」


俺は即答した。


「あぁ」


ユウキは俺を見る。


「そこは……どんな場所なんだ?」


俺は言った。


「孤児院」



沈黙。



俺は続ける。


「人手不足だ」


ユウキが呆れた顔をした。


「勇者が、就職活動か……」


俺は言った。


「もう内定は出したからな?」


侍従長が少し笑った。


「被害者が雇用主」


頷く。


「監督責任も明確」


少し考える。


「そして、社会貢献」


「文句あるか?」


やがて侍従長が小さく笑った。


「……勇者の刑罰が、孤児院勤務」


俺は言った。


「面白いだろ?」


「えぇ。とてもイロハ殿らしい」


侍従長が静かに続けた。


「では――」


目を細める。


「――魔王陛下への上申書を作りましょう」


俺は頷いた。


ユウキがぽつりと言う。


「なあ」


俺を見る。


「これ」


少し笑う。


「勇者、の仕事なんだよな?」


俺は答えた。


「そうだ」


俺は続ける。




「腹を空かせた子供に飯を食わせる」




灯りが揺れる。


「それ以上の勇者の仕事を――」


少し肩をすくめる。


「――俺は知らない」


ユウキは何も言わなかった。


ただ、小さく頷いた。

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