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【第5部 幕間】第2話 牢獄の中で
石の床は、冷たい――
何日だろう。
いや。
何週間かもしれない。
何ヶ月かもしれない。
もう分からない。
時間の感覚は、とっくに壊れていた。
カタン――
鉄格子の外で音がする。
木の皿が差し込まれた。
パン。
スープ。
いつもの食事だ。
ユウキは、しばらくそれを見つめていた。
拷問はない。
尋問もない。
誰も何も聞かない。
ただ――
ここにいるだけだ。
静寂。
遠くで足音が消える。
また、1人になった。
ユウキはゆっくりと壁にもたれた。
――女神の声は、聞こえない。
あの日から、一度も。
胸の奥に、あの男の声が蘇る。
正義は理念じゃない、結果だ――
ユウキは目を閉じた。
勇者なら、象徴を持て――
胸が痛む。
戦いはな、正しさで勝つものじゃない――
石の床を見つめる。
見たもの――
触れたもの――
自分で確かめたもの――
それだけが、お前の判断材料になる――
ゆっくりと息を吐いた。
象徴が無いなら――
ただの、都合のいい道具だ――
沈黙。
長い沈黙。
ユウキは、かすれた声で呟いた。
「……俺は――」
言葉が続かない。
天井を見上げる。
石の天井。
変わらない景色。
ぽつりと、言葉が落ちた。
「母さん……」
静かな声。
「父さん……」
喉が震える。
「……ごめんなさい」
誰も聞いていない。
ただ、石の牢が沈黙を返すだけだった。




