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【第5部 幕間】第1話 戦線

重厚な扉が閉じられ、評議会室に静寂が落ちた。


円卓を囲む男たちは、

互いの顔を探るように視線を巡らせている。


やがて一人が口を開いた。


「……国務卿が失脚したな」


別の男が鼻を鳴らす。


「あいつのことだ。欲をかいたのだろう」


「らしいな」


「しかし妙だ」


椅子にもたれながら、別の議員が言う。


「国務卿を取り押さえたのは――」



一瞬、言葉を探すような間。



「勇者ユウキを制圧した――」


「……イロハ、だったな」


数人が小さく頷く。


「なぜだ?」


「さあな」


肩をすくめる者がいた。


「詳細は不明だ。魔王側が隠蔽している」


「……魔王か」


小さく舌打ちが響く。


「厄介だな」


すぐに別の声が返る。


「ふん。所詮はお飾りだ」


「だが」


別の議員が口を挟む。


「閣下が実権を握る可能性は――」


言葉を遮るように、低い声が落ちた。


「ない」


円卓の一角。


年老いた議員が静かに言う。


「我々が墓穴を掘らない限りはな」



沈黙。



誰かが苦笑した。


「……国務卿のように、か?」


「あぁ」


短い返答だった。


やがて、卓の中央に座る議長が手を叩く。


「その話は終わりだ」


室内の視線が集まる。


「とりあえず静観する」


議長は淡々と言った。


「我々に尋問があっても、何も知らん」


一拍。


「それは――事実だ」


小さな笑いが漏れる。


「……本題に移るぞ」




議長が書類をめくる。




「戦線は?」


一人の議員が報告書を開いた。


「魔族軍が優勢です」


「ほう」


「確実に戦線を押し上げています」


別の男が口を挟む。


「だが被害も出ているだろう」


「ええ。両軍ともに」


すると誰かが吐き捨てるように言った。


「回復魔法があるだろう」


視線が集まる。


男は肩をすくめた。


「怪我人は治して前線に戻せばいい」


「兵は駒だ」


誰も反論しなかった。


書類を閉じる音が響く。


議長がゆっくりと口を開く。


「つまり、戦争は続く」


誰かが小さく笑った。


「魔王が何をしようが関係ない」


別の議員が頷く。


「魔王は実権を握れん」


そして最後に、議長が結論を告げた。


「戦争は止まらない」


議長は淡々と続けた。


「止める理由がない」


誰も反論しない。


戦争が続けば、



武器は売れる――


食料は動く――


金は流れる――


そして、

権力もまた、維持される――



議長は静かに言う。


「戦争は続く」


その結論に、

異を唱える者はいなかった。

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