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【第5部】第12話 対話

気づいた時には、

いつの間にか足元に猫がいた。


さっきまで余った石材の中にあった視線。


白い毛並みは、妙に整っている。


「……」


俺はしゃがみ込み、頭を撫でた。


軽い。

柔らかい。


「……飼い猫か?」


猫は喉を鳴らした。


抱き上げる。


モフモフだ。



――あぁ……



可愛いな。


俺は抱えたまま立ち上がる。


軽く腰を叩く。



トン、トン――



そして、

急に声が流れてきた。




『なんじゃ?腰痛持ちか?』




俺の手が止まる。


声の方向は……


猫。


でも耳に聞こえたのではない。

脳に直接語りかけてきた。


「????」


俺はすぐ、猫の尻尾を見る。


「二つに分かれていない……

 猫又ではない、よな?」


『なんじゃ猫又とは?

 お主がいた世界の猫の名か?』



――あぁ、そういうことか。



「猫又は化け猫のことだ。

 久しぶりだな、女神さん」


『ようやく気づいたか。

 それより、化け猫とは失礼なやつじゃ。

 せっかく可愛く作ったのじゃぞ?』


「作った?本物ではないのか?」


『魔素で作っておる。

 用が済んだら、また魔素に戻るだけじゃ』



――魔素、か。


――カイムの話だと魔法の素材……だったな。


――結局よく分からん、謎物質だな。



「で……

 こうやって会いに来たからには、

 何かあるんだろ?」


一拍。


「場所を移すから、ちょっと待ってろ」


『察しが良いのぉ』


そして――


『と、その前に……』


猫の額に魔法陣が現れた。


次の瞬間、

急に俺の腰が温まる。


そして――


腰の重い痛みが、消えた。



――しまった……


――こいつ、俺に恩を売りやがった。



『どうじゃ?楽じゃろ』


「……あぁ」


俺は腰を軽く動かす。


確かに楽だ。

驚くほど。


「ちなみに、

 腰痛には効かないと、以前聞いたのだが」


『あんな男の回復魔法と比較するでない』


一拍。


『妾は女神だぞ?』



――"あんな男"か。


――監視されている訳だな。



とは言え……


「助かる。礼を言う」


『……案外素直なんじゃな』


少しだけ嬉しそうな声だった。


『まぁよい。

 これで、妾の話も聞く気になったじゃろ?』


「聞く気、というか……」


一拍。


「聞かない訳にはいかんだろ」






公園の奥——


ラベンダー畑の外れ。


猫を抱えたまま、

誰もいない場所まで歩く。


さて。




――俺を、何に使うつもりだ?




風が、止んだ。

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