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【第4部 幕間】第3話 収穫の時

高笑いが、空間に響いていた――


光も影もない、白い空間。


その中央で、女神は笑っていた。


「くくく……」


肩を震わせる。


「始まったのう」


指先が空をなぞる。

空間に、景色が映る。



新聞——


街のざわめき――


軍の動き――


怒り――


恐怖——


憎悪——



「良い……」



恍惚の声。


「実に、良い」


空気が、わずかに揺れる。

見えない粒子が、集まってくる。



感情――


恐怖。


怒り。


絶望。



それらが、濃い霧のように集まっていた。


女神は、それを胸いっぱいに吸い込む。


「はぁ……」


ため息のような吐息。


「濃いのう」


目を細める。


「感情に揺れる魔素は、格別じゃ」


口元が歪む。


「でかしたぞ、ユウキ♡」


くすくすと笑う。


「戦争はな――最高の収穫期じゃ」


指を弾く。


景色が変わる。






暗い石の部屋——


鉄格子。

鎖。


その中で、男が座り込んでいた。


勇者ユウキ――


虚ろな目。

状況を理解できていない顔。


女神は、それを見下ろす。


「……」


一瞬、無表情。


そして、あっさりと言った。


「もう用済みじゃな」


景色が消える。


興味は、もうない。






次の景色が映る――


川辺。


子供たちの笑い声。


遊具。


調理用の鉄板。


ラベンダーの畑。


その中央に――男。




イロハ――




女神の表情が、わずかに曇る。


「……これは、いかん」


指先で、空間を拡大する。



子供——


生活——


安定——


笑顔——



「魔素が、静かすぎる」


低い声。


「感情が揺れておらん」


さらに視線を細める。


「極大魔法の消失――」


「生活の構築――」


「環境の安定……」


小さく呟く。


「……読めん」



一瞬だけ、沈黙。



だが、すぐに笑った。


「まあ、よい」


手を振る。


「戦争が始まれば、こんな場所も関係あるまい」



一瞬だけ、視線が止まる。



「……放置じゃ」


景色が消える。






女神は、奥へと歩く。

白い空間の、さらに奥。


その先には――


暗い部屋。


そこに佇む、巨大な水晶。

内部には、黒い霧のようなものが渦巻いていた。


魔素——


女神は、その前に立つ。


手を触れる。

水晶が、脈打つ。


彼女の呼吸が、少し荒くなる。


「まだ、足りぬ……」


低い声。


「もっとじゃ」


水晶に額を当てる。


「戦争を広げねば――」


「恐怖を増やさねば――」


目を見開く。

狂気と執着が混ざった光。


「魔素は……」


震える声。


「妾のものじゃ」


かすれるように、続ける。


「この命を繋ぎ止めるには――」


「もっと――」


「もっと集めねば――」


水晶の中で、黒い霧が渦を巻いた。

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