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6、国王様、策を練る。

 大変お待たせ致しました……。


 新キャラ登場です!!

 今回は三人称文体であり、そして主人公が出てきません。視点も一度変更します。

 また、若干のシリアス成分を含んでいます。


「ふふふふふ」


 サアヤの部屋から出ていった後、国王ことフランシス・ウェーバー・ジュダスは部屋一杯の書類の山に埋もれながら、執務室で仕事をこなしていた。


 窓のある南側を正面に、壁だけの北側に重厚感のある机やイスが置かれ、東側にドア、西側には大量の本棚が並ぶ。


(みんなの前でサアヤを勝手に婚約者にした時、名前が分からないからタマ(仮)って呼んじゃったよね。知られたら怒るかな?)


 フランシスの口元に笑みは浮かぶものの、手は動き続いていた。


 また書類一つ一つにざっと目を通し、問題のある書類を分け、問題のないものにはサインを書いていく。そして次々に新たな山を作り出す。


(サアヤに関して考えるのは、それほどめんどくさく感じないな。なんでだろ? サアヤが面白くしてくれそうだからかな、それとも僕とは真逆の人間だからかな?)


 フランシスはめんどくさがり屋である。そのため仕事を早く終わらせ、戦争を行わない。余計なことも考えない上に、権力すらも今持っているもので充分、と公言している。


 つまり貴族にとっても国民にとっても、国王でいて欲しい人物、ということになる。


 次にフランシスはサアヤの容姿や性格に関して考えているようだ。


(見た目は犬っぽいけど、中身は猫みたいだよね。警戒心が強くて、自分の意思を通そうとするし。しかも縛られたくないみたい)


 サアヤを思いだしながら、手を少しだけ止めて一人思考する。


(最初に見たときから、サアヤが妻だったらいいなって思っちゃったのは、普通そうな子だからかもね)


 フランシスは二人人を呼び、決算済みの書類一人に、もう一人に問題のある書類を渡す。


(サアヤの書類関係はもうそろそろで仕上がるね。旅に出るまでにどこまでサアヤ(獲物)を追い詰めるかだけだね)


 フランシスは、腹黒い笑みを浮かべた。




 ――時はサアヤが異世界転移した直後にまで戻る。


「なっ! あれは魔法陣ではないか!?」


 猫を抱えたままへなへなと座り込む一人の女性――白石(シライシ) 芽衣子(メイコ)はそう呟いた。芽衣子は風になびく黒髪を放置したままで、同色の瞳も虚空を見つめていた。


「お嬢ちゃん、怪我はないかい?」


 声の主であるおじさんは、心配そうな顔で少し距離を置いて、芽衣子の顔を覗き込んでいた。


「あっ、すまん……ごめんなさい」


 芽衣子はおじさんに声をかけられて、ようやく道路の上に座り込んでいたことに気づいたようだった。

 芽衣子はあわてて立ち上がって歩道の上に戻った。


「他の通行人の人たちが、警察と救急車を呼んでいるから、安心していいよ」

「う、うむ。……みなさん、ありがとうございますなのじゃ」


 芽衣子はどうにも古めかしい言い方をしているため、周囲の人も一瞬怪訝そうな表情を浮かべたものの、事故があったばかりで精神的に何かがあったと思ったようだ。


 そして芽衣子はというと、現場に居合わせた通行人の方たちに対して頭を下げていた。


「あれっお嬢ちゃん、右手の甲、怪我でもした?」


「――はっ?」


 芽衣子は驚いて自分の右手の甲を見る。

 するとそこには。

 炎のように赤い、大輪の薔薇の花の紋章が鮮やかに浮かび上がっていた。けれどそれは芽衣子が見た次の瞬間には、跡形もなく消えてしまう。


(……消え、た?)


 そもそもアザ(・・)はどうして急に現れたのだろうか?

 おそらく先ほどの魔法陣が関係しているのだろう。


 芽衣子が生まれた時にもアザはあった。だが生後数週間で消えてしまったらしいと、両親からは聞かされていた。

 一枚だけアザが映っていた写真があり、今見たそれと良く似ていたようだ。


「あれっ、おじさんの見間違いだったみたいだ。ごめんね、お穣ちゃん」

「いや、すまんの。心配して下さってありがとうございますなのじゃ」


 芽衣子は親切な上に心配もしてくれた優しいおじさんに、微笑みながらぺこりと頭を下げた。

 けれど芽衣子は内心で、全く別のことに気を取られている。


(これから異世界とか勇者とか魔王とか、異世界を中心にした冒険が始まるのじゃろうか!? 萌えと亜人と魔法があれば、この封印した左手が大暴れ出来るはずじゃ!)


 芽衣子はガッツポーズをして、すぐにその場を立ち去った。


 芽衣子という女性は、つまり。

 「中二病」を発症していたのだった――!

 国王様は今回も腹黒いのですが、勇者のキャラが……。

 勇者=残念な子になってしまいました(笑


 ※中二病とは

 中学2年生(14歳前後)で発症することが多い思春期特有の思想・行動・価値観が過剰に発現した病態のこと。

 多くは年齢を重ねることで自然治癒するが、稀に慢性化・重篤化し、社会生活を営む上で障害となることがある。

 特異的な身体症状や臨床所見は見出されていない。例、自分は特別な存在だと思い込む。

 例、自分は特別だと思いこむ。


2013/10/19 加筆修正

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